2011年04月05日 14:00 〜 15:00 10階ホール
シリーズ企画「3.11大震災」① 飯田哲也 環境エネルギー政策研究所所長

会見メモ

シリーズ「3・11大震災」の第一回として、原子力・エネルギー政策を専門とする飯田哲也さんが「二度と悲劇を繰り返さないための6戦略」を発表し、質問に答えた。福島第一原発について「石棺封じ込め方式への転換」などの出口戦略を説明した。


≪「石棺化に早く転換するしかない」「日本の原子力技術では手に負えない。世界の科学と研究者を借りるしかない」≫

飯田哲也さんは、無策、無能、無責任の「原子力村」では対応できていないし、水による冷却もあきらめた方がいい、と述べ、「出口戦略に移るべきだ」と主張した。その内容として①「原発震災管理官(仮称)」を任命し、指揮をとらせる②石棺で、崩壊熱を管理しながら閉じ込める③リアルタイムの放射能モニタリングを展開する④実測・予測データに基づき避難地域を再設定する⑤日本原子力研究開発機構(年間予算2000億円)の改廃などで、恒久的な事故処理機関を設置する⑥東京電力の賠償責任と、原発埋蔵金である再処理積立金(3兆円)などを活用した国の補償――をあげた。石棺については、ロボットでできる唯一の方法であり「これしかない」と述べた。

さらに、▽浜岡原発など地震リスクに脆弱な原発の緊急停止命令を政府が出す▽原子力安全保安院など既存の規制機関を廃止し、独立した安全規制機関を新設する③全国一体の送電会社を創設し、地域独占・鎖国状態の電力市場を改革する――などを提唱した。そのうえで、自然エネルギーへの投資を進め、2020年に自然エネルギーの比率を30%に引き上げることを訴えた。計画停電を実施しなくても対応可能な方法も説明した。

福島第一原発の現状について「注水で、良くもなく悪くもない均衡状態が継続し、作業員被ばくと放射能流出がだらだらと続くいている。再臨界のリスクや水蒸気爆発のシナリオはゼロではない」と指摘した。


司会 日本記者クラブ企画委員 瀬川至朗


環境エネルギー政策研究所のホームページ(会場で配布された2つの戦略ペーパーを掲載している)

http://www.isep.or.jp/


会見リポート

「石棺化」へ早期転換

今井 伸 (元毎日新聞論説委員)

飯田さんは京大工学部原子核工学科卒、原発設計の実務経験があり、福島第1原発では使用済み核燃料の中間貯蔵プールの設計に携わったという。現在は自然エネルギーを重視する環境・エネルギーの第一人者。テーマよし、タイミングよし、講師よしの緊迫感あふれる1時間だった。

 

現在進行中の福島第1の事故は世界史に残る最悪事故の1つであり、「政府・東電の対処は泥縄的なその場しのぎ」「日本では手に負えない。世界の生きた知恵を集めるべきだ」「原子力村の無策・無能・無責任がここでも」と厳しい。推進と規制が同じ省庁の下で行われ、これらと電力会社が特定の大学の少数の出身者で固めた「原子力村」を形成し、なれ合ってきた。ちなみに「原子力村」の名付け親は飯田さんだ。

 

どうしたらいいのか。まず「出口戦略」を決めること。冷却・封じ込めに数年単位、その後の管理に100年単位かかると予測されるのに、現状は官邸、原子力・安全保安院、東電の3つのリーダーシップが混乱している。まず、全権委任した「原発震災管理官」を任命し、統合的な危機管理・事故処理体制を整えること。そして「石棺化への早期転換」。チェルノブイリはコンクリートで固めたが、膨大な崩壊熱を持つ福島第1は「除熱可能な石棺化」でなければならず、誰もやったことがない。国際的なチームで今から研究しなければならないと指摘する。

 

「3・11は明治維新、太平洋戦争敗戦に次ぐ、歴史的な『第3のリセット』の日」という基本認識に筆者も大賛成だ。原子力安全行政と原子力・エネルギー政策をリセットし、まず緊急措置として、浜岡など地震・津波リスクのある原発を緊急一時停止する。東電が全額賠償責任を負ったうえで、国は原発埋蔵金3兆円、原子力の新規開発・立地のための毎年5000億円の予算などを活用して支援すべきだ、などの提言を行った。


ゲスト / Guest

  • 飯田哲也 / Tetsunari IIDA

    日本 / Japan

    環境エネルギー政策研究所所長 / Executive Director, Institute for Sustainable Energy Policies

研究テーマ:シリーズ企画「3.11大震災」

研究会回数:0

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