会見記録/昼食会/研究会

2011年3月31日    15:00〜 16:30
津田大介 メディアジャーナリスト、塚越健司 一橋大学大学院    10階ホール

氏名 津田大介 メディアジャーナリスト、塚越健司 一橋大学大学院 Name Daisuke TSUDA, Media Journalist, Kenji TSUKAGOSHI, Hitotsubashi University
日本 Nation Japan
研究テーマ 世界の新聞・メディア
研究会数 13

会見メモ

ウィキリークスやソーシャルメディアとジャーナリズムについて、津田大介さんと塚越健司さんが研究会「世界の新聞・メディア」⑬で話した。津田さんは東日本大震災でツイッタ―などが果たした役割についても語った。


≪「既存メディアとネットはとっくに融合している。不毛な争いをしている場合ではない」「ツイッタ―とテレビは相性がいい。秒間6739ツイートという世界記録は去年の紅白歌合戦(の視聴者間)で生まれた」(津田大介)≫


まず、塚越さんが「ウィキリークスとは何か」と題して話した。これまで、リークは内部告発者が危険を覚悟して行う倫理的行為だったが、ウィキリークスは「気軽に、手軽に、安全に実行できるリークツール」を発明した。「人々の潜在的なリーク願望に火をつけたのであり、技術が人をリークに駆り立てる」と説明した。さらに、ウィキリークスと同じようにリークを受け付けるサイトが世界各地で生まれている。ウィキリークスから分かれた「オープンリークス」というサイトは、提携するマスメディアにリーク情報を提供するハブ機能をめざすという。塚越さんは「リーク化社会」ということばを使い、こうした流れは変わらないと指摘した。

続いて、津田さんは、大震災でツイッタ―やミクシー、フェイスブックといったソーシャルメディアが情報発信や交換で大きな役割を果たしたことを説明した。「ウィキリークスはメディアにおける9.11事件だ」(中国のブロガ―、安替=アンティ=氏)ということばを紹介し「情報の流れ方が変わった。マスメディアが取材しトップダウンで市民に伝えていたのが、市民が情報を出し、マスメディアが編集し価値づけして流すボトムアップになった」と説明した。チュニジアやエジプトなどソーシャルメディア革命の流れを振り返り、「政治圧力を生みだしたのはソーシャルメディアではなく民衆のデモだった。だが、人々が行動するきっかけとなり背中を押したのがソーシャルメディアだった。いわば『動員の革命』だ」と述べた。

ネット上でみられる「既存メディアへの不満」について「第一に、バイアスのかかった編集への不信感がある。第二に、各メディアが横並びのニュースを流す不信感もある。それらが『メディアは情報操作している』という不満につながる」と分析した。横並び編集から脱却するため、報道につながるソース(素材)はネットで公開してユーザーが報道内容を検証できるようにすべきだと提案し、例として、官房長官会見を紙面で記事化するだけでなく、会見の一問一答全文をネットで公開する手法を紹介した。また、ネット上の不確かな情報の検証がプロの仕事となる、とも指摘した。

2人は「日本人が知らないウィキリークス」(7人の共著、洋泉社新書)でウィキリークスについて論じている。


津田大介さんのツイッタ―

http://twitter.com/tsuda

塚越健司さんのツイッタ―

http://twitter.com/kenjitsukagoshi

YouTube

会見詳録

津田大介 メディアジャーナリスト、塚越健司 一橋大学大学院 写真 1 津田大介 メディアジャーナリスト、塚越健司 一橋大学大学院 写真 2 津田大介 メディアジャーナリスト、塚越健司 一橋大学大学院 写真 3    

記者による会見リポート

ジャーナリズムの一定機能を担う

研究テーマ:世界の新聞・メディア

研究会回数:13

世界を撹乱する情報テロリストか、新ジャーナリズムの英雄か──。内部告発サイト「ウィキリークス」とその創設者ジュリアン・アサンジ氏を題材にした本が次々出版され書店に並ぶ。一過性の話題とは片付けられない。インターネットが引き起こす地殻変動が報道の領域にも及んでいることのひとつの象徴がウィキリークスといえるだろう。


一橋大大学院に在籍する塚越健司氏(左)はウィキリークス登場を「リークツールの発明」と説明した。かつて身の危険覚悟の倫理的行為だったリークが気軽、手軽、安全になったとの見方だ。


膨大な情報がネットを駆け巡り瞬時にコピーできる時代。米外交公電をウィキリークスに提供したとされる米軍のブラッドリー・マニング上等兵もデジタル技術なしには25万件もの公電を持ち出せなかったに違いない。個人の私的な事柄から国家機密まで、あらゆる情報が流出リスクにさらされる。ネット社会の宿命だ。


もちろん、のべつまくなしに情報が行き交う環境には危うさがある。今回の大震災でもネットに流れたデマが一時、人々を混乱させた。メディアジャーナリストの津田大介氏は「不確かな情報の検証はプロのジャーナリストの仕事」という趣旨のアサンジ発言を紹介し、既存メディアとネットが補完し合うことの有用性に言及した。


果たして、ウィキリークスはジャーナリズムと呼べるのか。会場からの問いに両氏の答えは、ジャーナリズムの構成要素として一定の機能を担うとの認識で一致した。従来の制度やルールを全く別のものに変える破壊力と創造力をネットは併せ持つ。その存在を前提に、信頼される報道をどう実現するか。われわれに突きつけられた課題は大きい。


日本経済新聞電子報道部次長 村山 恵一
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