2011年02月18日 15:45 〜 16:45 10階ホール
マルティ・ナタレガワ インドネシア 外相

会見メモ

ASEAN議長国であるインドネシアのマルティ・ナタレガワ外相が記者会見し、日本との二国間関係やASEAN外交の展開について語り質問に答えた。


≪「アジア太平洋の平和と安定にとって、互いを疑い、敵意を抱くような冷戦型思考に陥らないことが必要だ」≫

マルティ外相は、前原外相との外相会談を前に会見した。インドネシアが強権支配体制から世界第三の民主主義国に変化し、民主主義の配当という恩恵を受けたと述べ、「いまは史上最も強く団結している」と強調した。日本を「信頼できる開発のパートナー」と呼び、地域を超えたグローバルな問題で協力できると期待を示した。

FTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)とTPP(環太平洋パートナーシップ)の関係について質問されると、「FTAAPに至る道はAPECやASEAN、TPPなど複数の道があることを許容すべきであり、単独で完璧な道はない。インドネシアはTPP参加を決めていない」と答えた。中国の南シナ海など海洋進出について「たがいの利益を図ることは可能であり、ダイナミックな均衡を求めることができる。海洋は国々を分断するのではなく、国々をつなぐものだ。東アジア海洋フォーラムを創設し、さまざまな問題を議論したい」と述べた。


司会 日本記者クラブ企画委員 濱本良一(読売新聞)

通訳 宇尾真理子(サイマルインターナショナル)


外務省ホームページの外相訪日プレスリリース

http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/23/2/0215_02.html


在日インドネシア大使館のホームページ

http://new.indonesianembassy.jp/


会見リポート

落とし所をひねり出す

松尾 圭介 (時事通信外信部)

世界遺産プレアビヒア寺院周辺の国境未画定地域をめぐりタイとカンボジアが2月4日から始めた戦闘を調停しながらの多忙な来日となった。


発言前には手元の「iPad(アイパッド)」と思しき携帯端末を素早く操り、論点を確認。世界の一線で働く47歳の姿だ。一方で論点を噛んで含めるように語る様子には老練さも。人の話に耳を傾ける落ち着いた物腰は、確かに調停者向きだ。


来日までの間に、マルティ外相は東南アジア諸国連合(ASEAN)議長国として、2月7日にカンボジア入りし、ホー・ナムホン外相と会談。翌8日にはタイへ向かいガシット外相と協議した。さらに14日には米ニューヨークへ。国連安保理で事実上、ASEANへの調停一任を取り付け、労を厭わず東奔西走した。


18日に行われた当クラブでの会見では、調停成功に向けたポイントとして3点を指摘。①タイ・カンボジア双方は停戦に賛成はしてきたが、これをそれぞれ単独で行うのではなく、共同で繰り返すようにする②停戦監視についてカンボジアは「国連部隊が間に入ってほしい」と望み、タイは「停戦維持にいかなる第三者の介在も認めない」と主張、この妥協点を探す③そもそも根源の国境問題を解決するため2国間の交渉再開が必要だが、カンボジアは「中立の第3者も交え多国間交渉にすべきだ」と訴え、タイは「純粋な2国間協議」を要求、やはり落とし所をひねり出す必要がある─というものだった。


来日終了後の22日、ジャカルタで開かれたASEAN緊急外相会議でまとまった停戦合意は、議長国インドネシアが双方に15人ずつの監視団を派遣、当事者の両国は早急に2国間交渉を開始するということで、見事に足して2で割られていた。


ゲスト / Guest

  • マルティ・ナタレガワ / Marty Natalegawa

    インドネシア / Indonesia

    外相 / Minister of Foreign Affairs

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