2011年02月16日 11:00 〜 12:00 10階ホール
アーナンド・シャルマ インド 商工相

会見メモ

日本との包括的経済連携協定(CEPA)調印のため来日したインドのシャルマ商工相が記者会見し、日本とインドの関係強化について語った。


≪「インドの人口11億人の3分の2は若者だ。たしかに世界第二の速さで経済成長しているが高揚感はない。国民にもっと多くの機会をもたらしたい」≫


シャルマ商工相は前原外相との間で包括的経済連携協定に調印した直後に記者会見した。同協定について「歴史的に重要だ。両国のパートナーシップがさらに広がる。2013年にはアジア、欧州、米国のGDPは同じ水準となるだろう。インドは途上国であり、インフラ投資、食糧安全保障などの課題がある」と述べた。

日印原子力協定の交渉に関して「世界と調和しながら、エネルギーの多様化を進めたい。だが、国防と安全保障は国家主権の問題だ。インドは国際規範を破ったことは一度もない」と述べ、原子力平和利用と核兵器保持の両面で譲らない姿勢をみせた。TPP(環太平洋パートナーシップ)について「どんなパートナーシップも重要であり歓迎する。アジアの経済統合は進んでおり、インドも加わっていきたい。日本との包括的経済連携協定は、日本とインドがそれぞれ結んでいるほかの連携協定より強い内容だ。最終的にはTPP参加も考えられる」と説明した。また中国との関係を聞かれると「最大の貿易相手国のひとつで経済関係は強い。国境など未解決の問題は交渉で解決する。両国で世界人口の38%を占める。日本、インド、中国の協力はアジアの再台頭の文脈で考えたい」と答えた。


司会 日本記者クラブ企画委員 坂東賢治(毎日新聞)

同時通訳 池田薫 富永恵子


在日インド大使館のホームページ

http://www.embassyofindiajapan.org/new/src_JP/home/index.htm


日本外務省ホームページの日本インド包括的経済連携協定のサイト

http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/fta/j_india/pdfs/gaiyo.pdf


会見リポート

にじみ出る再興国の自信

奥田 宏二 (日本経済新聞ヴェリタス編集部)

再興国──。日本との経済連携協定(EPA)の署名のため来日したインドのアーナンド・シャルマ商工相は自国をこう定義してみせた。新興国と言われるインドだが、今から約500年前、国内総生産(GDP)は世界経済の4分の1を占める超大国だった。産業革命後の長い眠りから完全に目を覚ました“巨象”は「中国に次ぎ世界2番目の速度」(シャルマ商工相)で経済成長の道を突き進んでいる。


日印EPAは両国の貿易総額の94%分の品目の関税を10年以内に撤廃する。外資の参入が制限されてきたインドの小売市場への参入自由化も明記した。シャルマ商工相は「新たな扉を開いた」と評価。「日本の付加価値の高い工業製品や技術が持続可能な経済発展をもたらしてくれる」と期待を寄せる。


筆者は昨年12月、インドの首都ニューデリーと商都ムンバイに取材のため足を運んだ。まず驚いたのは特有の自動車事情だ。脆弱な道路網は都市部で慢性的な渋滞を引き起こし、クラクションが昼夜を問わず鳴り響く。農作物や果物の3割以上が配送中に腐ってしまうという。冬場でも停電があるなど急成長にインフラ整備が追いついていないのだ。


年間所得が日本円で16万円に満たない貧困世帯は1億を超え、依然として課題は山積みだ。それでも「昨日より今日、今日より明日の方が必ずよくなる」。こう信じて働くインド人に多く出会った。


1982年生まれで物心ついたころにはバブルがはじけ、日本の経済成長を実感していない筆者だが、高度経済成長時の日本の姿を見た思いがした。高成長にも「浮かれ騒ぐことはなく、高揚感はない」とのシャルマ商工相の言葉とは裏腹に、その口ぶりには再興する国家への自信がありありとにじんでいた。


ゲスト / Guest

  • アーナンド・シャルマ / Anando Sharma

    インド / India

    商工相 / Minister of Commerce and Industry

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