2011年02月10日 18:00 〜 19:50 10階ホール
試写会「トゥルー・グリット」

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会見リポート

アメリカンスピリット

菅谷 齊 (共同通信出身)

悪しき者は追う者もないのに逃げる─。物語はこの言葉から始まる。父を射殺して金貨2枚を奪い逃走した使用人を、14歳の少女が酔いどれ保安官らとともに仇討ちを果たす…。

 

監督のコーエン兄弟、総指揮のスピルバーグ、保安官役たちはいずれもアカデミー賞の受賞者。主役の少女マティを演じるスタインフェルドは1500人のオーディションから選ばれるなど話題は満載で、アカデミー賞の10部門にノミネートされた。

 

時代は西部開拓史の終わりごろの1878年、舞台はアーカンソー、オクラホマ。カウボーイとガンマンが跋扈していた中西部である。犯人は悪党の一味に入ってインディアン領に逃げ込んだ。本懐を遂げた後、毒蛇にかまれた少女を保安官が馬で昼夜を走り、医者のところに駆け込み一命を取り留める。寸前で力尽きて倒れた馬を射殺する保安官の決断は、少女の命を第一とした大人の選択肢として印象深い。

 

単純なストーリーの背景に「家族愛」「悪への挑戦」「冒険心」を持った少女のアメリカンスピリットがある。タイトルの「トゥルー・グリット」(真の勇気)に多くの人が共鳴した理由が見て取れる。少女の帽子や荒くれ男たちの衣装や強さの象徴ヒゲなど時代考証もみどころのひとつ。西部開拓時代の知識を持って見るとさらに興味が湧く。

 

この時代の米国はOK牧場の決闘など荒さが残る一方、新聞が大企業化し、エジソンが蓄音機や白熱電灯などを発明。小説『トム・ソーヤーの冒険』が人気を得ていた。東海岸では野球の大リーグが行われている。そのコントラストに米国の広さをあらためて感じる。原作は1968年に新聞連載された小説で、69年に「勇気ある追跡」の題名で映画化されている。


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