2011年02月18日 13:30 〜 15:00 10階ホール
研究会「大使に聞く ペルー」目賀田周一郎 駐ペルー大使

会見メモ

目賀田周一郎・駐ペルー大使が、シリーズ研究会「大使に聞く」で最近のペルー情勢と日本との関係について話した。


≪「ペルーはテロやインフレ、大使公邸占拠事件のころと比べると様変わりした。鉱物資源に恵まれ、安定して発展している。成功のモデルとなってほしい」≫

目賀田大使は、2008年2月に着任したころを振り返り「日本ペルー関係の再構築が課題だった」と述べた。2000年から日本に滞在していたフジモリ元大統領の身柄引き渡し問題が紛糾し両国関係は悪化、2006年にフジモリ氏がチリに出国しようやく関係正常化が進んだ。ガルシア大統領との首脳外交で両国のEPA交渉が終了し、日本方式のデジタルテレビをペルーが採用するなど、関係が強化されたことを説明した。

2011年4月には大統領選が行われ、トレド前大統領、フジモリ氏の娘ケイコ・フジモリ氏、カスタニェダ前リマ市長ら有力候補は5人いる。大使は世論調査の数字を紹介し、「第一回投票で過半数をとる候補はいないとみられ決選投票になるだろう」と述べた。禁固25年の刑が確定しているフジモリ元大統領の影響力について「ケイコ・フジモリ氏が20%の支持率を集めていることは父親への評価に基づいている、といえる。しかし、汚職が大統領選の争点になるとフジモリ氏のネガティブイメージにつながる。国民の元大統領への見方は、功罪なかばというところではないか」と答えた。


在ペルー日本大使館のホームページ

http://www.pe.emb-japan.go.jp/inicio_jp.html

日本外務省ホームページのペルーのページ

http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/peru/

司会 日本記者クラブ事務局長 中井良則


会見リポート

フジモリ政治とは 大統領選に注目

千野 境子 (産経新聞特別記者)

冒頭、「赴任して3年が経過し、中南米への関心がやや低いのではないかとの印象がある。ペルーは将来性ある国なので注目していただきたい。とくに企業関係者には」と挨拶した。会見を通じて結局、この一言に大使の思いは尽きるように思えた。


昨年の成長率8・8%は中南米でもトップクラスで経済は好調。資源も豊富。昨今の中東などと比べ政治的リスクも相対的に低い。そして親日的なガルシア政権。好材料はいっぱいあるのに、注目度は必ずしも比例しない。ツライところだ。いやだからこそ大使のガンバリどころか。


しかし関心を呼びそうな事態がまもなく来る。次期大統領選挙だ。同国の今後の鍵を握るのはもちろん、フジモリ元大統領の娘ケイコ・フジモリ議員の戦いぶりが興味深い。


最新の支持率はトレド元大統領を追い2番手だが、誰も過半数は取れず上位候補2人による6月決選投票の公算が大だ。トレド対フジモリはトレド有利らしいが、「情勢がガバッと変わるのがペルーの選挙」と目賀田大使。そう、父の時だって泡沫候補からツナミ現象を起こし、昨年ノーベル文学賞を受賞した作家リョサ氏を退けたのだった。


かくて「ケイコになれば(父を)恩赦しますか」と気の早い質問も。「イシューにならぬよう(ケイコ氏は)あえて触れないようにしているようです。誰が勝っても(ガルシア政権下で)再構築された良好な関係を保ってほしい」と外交官らしいそつのない答え。だが、「ペルーの人々はフジモリを終わった存在と見ているのか? 待望論はあるか」との問いには「功罪相半ばで申し上げにくい」と口ごもり、苦笑いした。


フジモリ政治とは何だったのか。単なるポピュリズムではなかったはず。大いにコミットした日本でも、答えは実はまだ出されていないのではないかとあらためて思った。


ゲスト / Guest

  • 目賀田周一郎 / Shuichiro MEGATA

    日本 / Japan

    駐ペルー大使 / Ambassador to Peru

研究テーマ:大使に聞く ペルー

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