2011年01月12日 15:00 〜 16:30 10階ホール
ロバート・フェルドマン モルガン・スタンレーMUFG証券 マネジング・ディレクター経済調査部長 研究会

会見メモ

ロバート・フェルドマン氏(モルガンスタンレーMUFG証券)が、シリーズ研究会「2011年経済見通し」で、世界と日本の経済を展望し、生産性の向上や選挙制度改革などの課題について語った。

≪「地方の声を過剰に聞く選挙制度は経済の持続性を破壊する」≫

フェルドマン氏はまず、2011年の世界経済について①経済成長率は先進国が低く、エマージング国が高くなり格差が大きい②物価上昇率は、途上国が高く、先進国がデフレないし低いというインフレ格差も広がる③石油や農産物の価格は上昇傾向が続く――と分析した。日本のデフレについて、「日本はデフレになってもいいという社会決定を行った。制度的にデフレになりやすい国だ」と述べ、要因として、日銀の結果責任を問う仕組みがなく、デフレでもいいという高齢者の利益が選挙結果に反映される投票制度をあげた。

長期的な課題として、生産性を高める重要性を強調した。生活水準つまり一人当たりの実質生産は、労働生産性に労働参加率をかけることで算出されるが、高齢化により労働参加率は上がらないので、生産性を上げなければ生活水準は下がると説明。日本の財政の教育費支出(対GDP比)は、OECD36カ国中34位と低いことを指摘し、日本がハイテク大国を維持するなら、教育費支出を増やし高齢者向け社会保障費を削減する選択肢もあるのでは、と問題提起した。さらに、一票の格差が大きく、高齢者が多い地方が過剰に優遇される現在の選挙制度を「経済の持続性を破壊する」と厳しく批判した。国会がバランスのとれた形で国民を代表するよう選挙制度を改めることを訴え、西岡参院議長の参院選挙改革試案を「西岡私案なら日本の将来は明るい」と高く評価した。

司会 日本記者クラブ企画委員 小此木潔(朝日新聞)

使用したパワーポイントの資料です。
http://www.jnpc.or.jp/files/2011/01/20110112Feldman_7Jan_2011J.pdf


会見リポート

「デフレの眠り」覚ます王子は

菅野 幹雄 (日本経済新聞編集委員兼論説委員)

新春研究会は9回目という〝外国人横綱〟だ。資料の題は「ゴジラから眠れる森の美女へ」。今回も興味深い。

物語を変えて外国人投資家の対日観を変えよ、と説く。日銀の結果責任が問われず、高齢者に有利な選挙制度が温存された結果、日本は「デフレで良いと思う社会」になった。長期デフレの「ゴジラ物語」をそう分析した。

美女を起こす王子は?「西岡武夫参院議長かもしれない」と一票の格差是正を狙う同氏の私案に期待する。環太平洋経済連携協定(TPP)の参加も必須と訴え、コメの輸出などで「農業の世界制覇はあり得る」と力説した。

世界経済では成長格差に加えて物価上昇率の格差が広がると予測。米国の金融緩和は効き始めたが、欧州の財政金融問題は「ちょっと心配」とみる。

試練続きの日本だが、突破口はまだ開ける。初来日から41年というフェルドマン氏に少し励まされた気になった。

ゲスト / Guest

  • ロバート・フェルドマン / Robert Alan Feldman

    モルガン・スタンレーMUFG証券 マネジング・ディレクター経済調査部長 / Ph.D. Managing Director, Morgan Stanley MUFG Securities

研究テーマ:2011年経済見通し

研究会回数:0

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