2010年12月17日 17:00 〜 17:45 10階ホール
天野之弥・国際原子力機関(IAEA)事務局長

会見メモ

2009年12月、国際原子力機関(IAEA)事務局長に就任した天野之弥氏が記者会見し、北朝鮮やイランの核開発などIAEAの課題について説明し質問に答えた。


天野氏は、IAEAが設立時から理想としたAtoms for Peace(平和のための原子力)の実現につとめる基本姿勢を示した。北朝鮮とイランについて、「意味のある成果で出る状態になれば訪問したい」と述べた。北朝鮮はIAEAの査察チームが国外退去したままであり「核開発の現状把握は十分ではない」と語った。イランに関するEU3+3(英仏独米中ロ)とイランの協議についても「話し合いの機運は出てきたが、方向は見えない」と述べるにとどまった。IAEAのもつ技術ががんの治療に使われたり、水資源の確保にも役立つことを強調した。核燃料バンクについて、(価格急騰など)市場原理以外の理由でマーケットが混乱した場合、最後の手段としてIAEAが管理する核燃料を提供するもの、と説明し、「超大国の市場支配ではない」と述べた。ウィキリークスが公開した米国の公電で「事務局長は米国より」という情報があったことについて「コメントする立場にはない。アメリカ一辺倒の立場をとったことはないし、とるつもりもない」と答えた。


IAEAのホームページ

http://www.iaea.org/

外務省ホームページのIAEAのページ

http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/atom/iaea/


司会 日本記者クラブ企画委員 脇祐三(日本経済新聞)


会見リポート

条件が整えば訪朝も

工藤 哲 (毎日新聞外信部)

アジア人初のIAEA事務局長として2009年12月から任務をこなして1年余り。会見では1年の歩みを「忙しいし、1日1日大きなこと小さなことがあったが、自分なりに力いっぱいやった」と振り返る一方、北朝鮮やイランの核問題などについて質問に応じた。一つ一つを順序立てて冷静に応対する姿からは、緊迫する核問題の交渉の最前線に立ってきた強い自負がうかがえた。


北朝鮮では要員が09年4月に国外退去となり、ウラン濃縮など核開発の把握は困難な状態が続く。核拡散防止条約(NPT)脱退も表明する中「唯一の検証機関として重要な役割を果たしたい。国連、主要国、IAEAが役割を果たすことが重要だ」と述べ、条件が整えば自らの訪問にも前向きな姿勢を示した。


国連安保理常任理事国とドイツの6カ国とイランの協議の現状については「(イランが保有する低濃縮ウラン国外搬出の)話し合いの機運は出てきたが、見通しが立たない」と述べるにとどまった。


一方、内部告発サイト「ウィキリークス」が自身の就任に先駆けて米国の大使に対し、重要な決定では米国に同調すると繰り返し示唆していたと暴露した問題については「米国一辺倒の立場を取ったこともないし、取るつもりもない」と強く反論、「大きな方向性としては各国の利益のために働くのが国際機関の責務だ。事実と私の行動を見ていただきたい」と強調した。


4年間の任期中に取り組みたい点にも触れ「IAEAの技術は途上国でも増えているがん治療や、水資源探査に貢献できる」と普段あまり報じられることがない役割を紹介。原子力を社会貢献につなげる強い意欲がうかがえた。


会見はもちろん日本語。その後記者の個別質問や名刺交換に気さくに応じ、つかの間の帰国にほっとした様子を見せた。


ゲスト / Guest

  • 天野之弥 / Yukiya AMANO

    日本 / Japan

    国際原子力機関(IAEA)事務局長 / Director General, International Atomic Energy Agency

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