2010年12月15日 15:00 〜 16:30 10階ホール
重家俊範・前駐韓国大使

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会見リポート

日韓“復縁”果たし安堵感

山本 勇二 (東京新聞論説委員)

「韓国は日本にとって、重要さでも難しさでも特別な国だと感じた」。約3年の任期を終え帰任した重家前大使の冒頭発言である。


最近のニュースを見ても、なるほどその通りだと思う。韓国は主要国との自由貿易協定(FTA)を果敢に進め、サムスンやLGの電子機器が世界で日本製品を圧倒している。一方で、北朝鮮軍による延坪島砲撃により朝鮮半島の緊張は急速に高まっている。


重家氏は在任中の日韓関係をめぐる成果として、シャトル外交の復活、経済危機に対応した通貨スワップの拡大、韓国哨戒艦沈没事件に対する緊密な連携を挙げた。2010年は日韓併合100年であり、両国メディアは歴史を検証する記事を多く報道したが、政府間や国民感情では深刻な対立はなかった。


盧武鉉前政権の時代には歴史認識をめぐって深い溝ができ、首脳の相互訪問も立ち消えになった。「李明博大統領が相互利益を重視する実用主義で臨んだのが大きい」と話すが、日本の政権交代後も日韓関係はほぼ順調だ。一時こじれた日韓の“復縁”を果たした、という安堵と自負が発言から感じ取れた。


「日韓は2国間の狭い枠組みにとらわれず競争と協力を深め、世界の中で共通利益を求めていくべきだ」と述べ、アジアの途上国支援で政府開発援助(ODA)を活用した共同事業を進め、民間企業レベルでも技術提携を深めることが必要だと提言した。特に李明博政権の任期中に、FTAあるいは経済連携協定(EPA)を締結するのが望ましいとの見解を示した。


出席者も韓国に対する関心の高さを見せ、歴史から安全保障、文化論まで質問が続いた。ただ「プロゴルフでも韓国選手がとても強いが、なぜだと思うか」という問いには、重家氏も苦笑するばかりだった。


ゲスト / Guest

  • 重家俊範 / Toshinori Shigeie

    日本 / Japan

    前駐韓国大使 / Former Ambassador to Korea

研究テーマ:大使に聞く

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