2010年12月03日 15:00 〜 16:30 10階ホール
安替・ジャーナリスト「世界の新聞・メディア」10

会見メモ

ツイッタ―を駆使し、中国で注目されているブロガ―、安替(アンティ)さんがシリーズ研究会「世界の新聞・メディア」⑩で中国のインターネット言論空間について話し、質問に答えた。


安替さんは、11月の上海のマンション火災のあと、市民10万人が献花に集まり、政府へ無言の抗議を示した事件を取り上げ、自分のツイッタ―で「あすの日本の新聞には報道されないだろう」と予測したら、そのとおりになったことを紹介した。日本のメディアが中国の政府系メディアの報道に関心を示し、ツイッタ―やブログに現れる世論を十分に読み取っていないのではないかと疑問を投げかけた。ツイッタ―の利用者は10万人程度だが、ほかのネットメディアのように政府の規制や削除がなく、人々の議論の場となり、さまざまな情報が行き交う空間となっていることを説明した。

また韓国の大手新聞が2000年ごろから中国語でのニュース発信を始めており、それが中国国内での朝鮮半島情勢のアジェンダセッティング能力を左右するようになっていることを紹介し、日本のメディアも多言語での情報発信をするべきだと促した。とくに中国のネットユーザーが「2ちゃんねる」から日本の情報を得ていることが多いと指摘し、こうした状況は日中関係にとっても望ましくないと強調した。


司会 日本記者クラブ企画委員 瀬川至朗

通訳 ふるまいよしこ(フリーランスライター)


安替さんのツイッタ―のアドレス

http://twitter.com/mranti


会見リポート

中国のネット言説にも注目を

今村 優莉 (朝日新聞GLOBE編集部(宮崎総局員))

日本のメディアに対する痛烈な警告だった。尖閣問題で日中が揺れた昨秋から2カ月間の日本滞在で導いた結論は「日本の中国報道には構造的な欠陥がある」ことだった。

11月、上海市で高層住宅が全焼した火災の「続報」が印象的だった。政府当局は当初、責任を業者に押しつけた。疑問を持った市民約10万人が火災現場で献花をした。市民の声におされる形で当局も最終的に責任を認める姿勢に転じたのに、日本の新聞はまったく報じなかった。

「日本では隣国で10万もの市民が平和的な抗議活動をしたことを重視しないのか」と嘆いてみせたが、本当の理由は「中国でも伝えたのはツイッターだけだったから、日本のメディアは見落とした」と見抜いていた。同じ日の日本の新聞に80人余が雲南省の炭鉱を襲撃した事件が載ったのは「党機関紙が載せたからだ」。

約4億人の中国のネット利用者のうちツイッターを使うのはまだ10万人ほどという。だが、安替氏はこの140字の「つぶやき」こそが「中国人が100%自由に表現できる空間だ」と言い、「インターネット民意」を今後は政府も無視できなくなると予測する。米国の中国大使は最近、安替氏ら著名ブロガーを公邸に招き、情報交換しているのに、「日本からはまだ呼ばれていない」。

日本のメディアにはこんな注文を寄せた。「中国の政府系メディアばかりに依存せず、中国人の肉声が詰まったインターネットにも注目してほしい。中国にも、もっと日本の情報を発信してほしい」。情報に飢えた中国のネットユーザーたちは「2ちゃんねる」を翻訳して日本の「民意」と伝えているケースもあるというから驚きだ。

入社5年目で20代の私は、ツイッターもミクシィもスカイプも使えるが、日本の新聞業界はまだ紙への依存が高いように思う。未来の日本のメディアを背負う私たちの世代への宿題だと思った。

ゲスト / Guest

  • 安替 / Michael Anti

    中国 / China

    ジャーナリスト / Journalist Blogger

研究テーマ:世界の新聞・メディア

研究会回数:10

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