2010年11月29日 15:00 〜 16:30 10階ホール
松尾文夫・ジャーナリスト「日米中」16

会見メモ

戦後和解について発言を続けているジャーナリスト、松尾文夫・元共同通信ワシントン支局長がシリーズ研究会「日米中」⑯で「日米、そして東アジアとの歴史的和解問題に取り組んで」のテーマで話した。


1933年生まれの松尾文夫さんは、戦争を体験した世代のジャーナリストとして、けじめを忘れた戦後65年間のツケがさまざまな形でいまの日本に現れていると述べ、歴史和解をとりあげる意味を強調した。福井市で米軍の空襲を生き延びた経験や、ドイツの「ドレスデンの和解」を知った衝撃などを語り、著書「オバマ大統領がヒロシマに献花する日」(小学館101新書)で提唱した日米首脳の相互献花による戦後和解について、詳しく説明した。小さなけじめの積み重ねが必要だとして、①12月8日の真珠湾記念式典で駐米日本大使が戦艦「アリゾナ」に献花②菅首相が訪米の際、アリゾナ献花③沖縄が「和解の島」として復活するため日中韓首脳会議を開催④「バターン死の行進」の元米兵捕虜に日本企業が謝罪⑤日本の首相が訪中の際、南京献花―――を提案した。


司会 日本記者クラブ企画委員 会田弘継(共同通信)


松尾文夫さんのブログ「アメリカ・ウォッチ」

http://homepage.mac.com/f_matsuo/blog/fmblog.html


会見リポート

首相の真珠湾弔問で同盟の深化を

滝野 隆浩 (毎日新聞社会部編集委員)

共同通信ワシントン支局長など日米関係を半世紀にわたってウオッチし続けた松尾氏は、いったん経営側に身を置いたあと、02年に現場復帰を宣言した。世界各地を渡り歩きながら論文を発表し続ける77歳の口調は、穏やかだが示唆に富み、聞いていて胸のすく思いがした。

こ こ数年は近著『オバマ大統領がヒロシマに献花する日』(小学館)にあるように、東アジアとの和解問題に取り組んできた。米大統領が被爆地を訪れることを切 に望んでいる。その前提として中国、韓国と真の意味での歴史和解を求めている。さらに、意外に知られていないことだが、ハワイ真珠湾のアリゾナ記念館を歴 代首相が一度も訪れたことのない事実を挙げ、首相の次の訪米を「真珠湾弔問」から始めるべきだと提案する。そのような積み重ねが、半世紀を迎えた今年、普 天間飛行場移設問題などで傷ついたようにみえる同盟関係を深化させる契機になると信じている。

ジョン・ルース駐日米大使が今夏、初めて広 島の平和記念式典に参列した。「あれは本国の指示ではなく、大使自身の発案といわれる」と明かした。米本国でオバマ大統領の支持率は低下し、「謝罪につな がる」という国内の反発を押しての大使の参列。「日本も過去にとらわれず、新しい発想でやっていかねば」

戦時中、疎開先の福井で空襲を経 験した。B29が投下した焼夷弾が不発だったために「生き残った」という体験が、日米報道にかかわる原点だ。今回の講演もまず、サンフランシスコ講和条約 について触れることから始めた。「全面講和か単独講和か国論が別れた。その後、ロシアなどとの交渉をきちんとしなかったツケがいま出てきている」。そうい えば来年は、講和条約締結60周年に当たる。さまざまな外交のツケに直面する節目の年なのである。



ゲスト / Guest

  • 松尾文夫 / Fumio MATSUO

    日本 / Japan

    ジャーナリスト / Journalist

研究テーマ:日米中

研究会回数:16

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