2010年11月25日 15:00 〜 16:30 宴会場(9階)
サンディープ・チャウラ・国連薬物犯罪事務所政策分析・広報部長

会見メモ

国連薬物犯罪事務所で薬物使用・取り締まりを調査、分析するチャウラ部長が、アジアにおけるアンフェタミン系覚せい剤(ATS)の使用や犯罪について報告書を発表した。


日本を含むアジア15カ国で、メタンフェミンやエクスタシー系(MDMA)のアンフェタミン系覚せい剤や大麻、アヘンなどの薬物の広がりを説明した。憂慮すべき問題として、①ミャンマーでメタンフェミン錠剤の押収が急増し、ヘロインからメタンフェミンに製造がシフトしている②動物用麻酔薬だったケタミンが中国、インドネシア、マレーシアで広がっている③麻薬使用者の治療――の3点を指摘した。


国連広報センターのホームページ

http://unic.or.jp/index.php


国連薬物犯罪事務所(UNODC)のホームページ

http://www.unodc.org/


司会 日本記者クラブ企画委員 高畑昭男(産経新聞)

通訳 池田薫(サイマル・インターナショナル)


会見リポート

麻薬に代わり拡大するATS犯罪

澤井 仁 (日経BP参与)

東アジア、東南アジアは世界でも急速な経済成長を遂げている地域だが、その裏では覚せ い剤の汚染が急速に広がっている。国連薬物犯罪事務所がこのほど調査した「東・東南アジアにおけるアンフェタミン系覚せい剤(ATS)などの薬物の最新パ ターンと動向」を発表、その概要をチャウラ氏が会見した。同氏は調査で得られた現状を根拠にした対策の重要性を強調した。

ATSが多くの国で、ヘロイン、大麻などの麻薬に代わり乱用拡大している。空中・地上調査で探知できる薬物用植物と違い、ATSはどこでも合成できるために発見しづらいからである。

ま たATS製造に必要な前駆物質は広く処方薬に利用される物質で、医薬品産業が存在する地域では、横流しによる不正製造がしやすい。ATSとしては作用の強 いメタンフェタミンが中心で、地域内の押収量はこの5年間で3倍に増えている。さらにエクスタシーと呼ばれるMDMAなどの合成も広がっている。

わ が国ではメタンフェタミンは51年に覚せい剤取締法が制定され規制されているが、最近になって使用が再び広がった。2004年以来国内では最も多く使用さ れている薬物で、大麻は二番目になっている。09年に押収されたメタンフェタミンの最大の原産地は中国で、次いで香港、メキシコ、カナダ、ロシアで、密輸 はこれら諸国に加え南アフリカ、トルコからも行われている。

09年の薬物関連逮捕者のうちメタンフェタミン関連の逮捕者は78%を占める。最近では国内の暴力団とイランの密売集団が国外の密輸組織とネットワークを組むようになった。

わが国は国連薬物犯罪事務所に対する支援国になっている。薬物犯罪がますます国際的組織で行われる時代になり、製造、密輸の規制強化と汚染対策は、国際的な取り組みが一層必要であることを痛感させられた。

ゲスト / Guest

  • サンディープ・チャウラ / Sandeep Chawla

    国連薬物犯罪事務所政策分析・広報部長 / UNODC Director for Policy Analysis and Public Affairs

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