2010年11月09日 14:00 〜 15:30 宴会場(9階)
岩本愛吉・日本エイズ学会会長「HIV/エイズ」

会見メモ

日本エイズ学会会長の岩本愛吉・東大教授が第24回日本エイズ学会学術集会・総会(11月24日~26日)を前に、シリーズ研究会「HIV/エイズ」で日本のエイズの現状や対策の課題について話し、質問に答えた。


「垣根を越えよう」。岩本教授は今年のエイズ学会総会のテーマを紹介し、学会にある臨床・基礎・社会の3分野、国境、民族、人種、男女、HIV陽性といった互いの違いを知り、情報交換することで「垣根」を越える機会にしたいと抱負を語った。日本の現状について、HIV感染者・エイズ患者の新規報告数(2009年)が計1452件であり、一日当たり4件、人口10万人当たり1.1件と世界と比較して低いレベルであることを指摘した。問題点として、①大都市でMSM(男性と性行為をする男性)に集中感染がみられる②若年層だけではない③薬物使用者に感染が増加する可能性に対し対策がない――などをあげ、「楽観視できない」と警告した。世界やアジアのエイズ流行の状況や中国、台湾、タイなど各国の事例もあげた。


司会 日本記者クラブ企画委員 宮田一雄(産経新聞)


日本エイズ学会のホームページ

http://jaids.umin.ac.jp/

第24回日本エイズ学会学術集会・総会のホームページ

http://www.secretariat.ne.jp/aids24/

東大医科研・先端医療研究センター・感染症分野、付属病院・感染免疫内科のホームページ

http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/didai/home.html

会見で使われた資料


会見リポート

垣根を越えよう

西内 正彦 (共同通信出身)

11月の第24回日本エイズ学会学術集会・総会のテーマは「垣根を越えよう」である。集会には毎年、「基礎」「臨床」「社会」の分野から専門家や現場で働く人まで2千人近くが集まる。だが、自分の分野と関連するセッションだけに参加するという縦割り状態に陥りがちだった。

「今回は毎日、全体会合を開き、他分野の人にも知ってもらう。最終日には各分野のハイライトを短くまとめて報告するセッションも設けた」と、分野の垣根を越えて交流し、HIV/エイズの最新情報を共有しようという狙いを話した。

そして、心、民族、人種、男と女、男と男、HIV陽性者と感染していない人などの間の垣根についても、「問題意識として今一度考えてもらいたい」とも語った。

日本のHIV/エイズの現状について、厚生労働省エイズ動向委員会の委員長を務める岩本氏は2009年の動向を、新規のHIV感染者報告は1021件で過去3位、エイズ患者報告は431件で過去最高と同数などと説明。

新規HIV感染者は日本国籍男性で、同性間性的接触を感染経路とするものが多数を占めていることを挙げて、特に男性同性愛者を中心に検査・相談・予防に関する啓発活動を進める必要性を指摘した。

また昨年は検査・相談件数が減少し、今年も低調に推移しているとし、「不安だと思ったら検査・相談に行くという前向きの行動をすることが重要」と警告。「医療や対策には、当事者が参加できるように」と、ここでも垣根を越える必要を強調した。

世界のHIV流行の大半はアフリカだが、世界人口の6割を占めるアジアの動向にも注意を払うべきだとした。さらに先駆的な対応をしている「アジア諸国からもっと学ぶべきだ」と述べ、国境を越えた協力の必要性を訴えていた。


ゲスト / Guest

  • 岩本愛吉 / Aikichi IWAMOTO

    日本 / Japan

    日本エイズ学会会長 / The Japanese Society for AIDS Research

研究テーマ:HIV/エイズ

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