2010年10月26日 00:00 〜 00:00
ジョゼット・シーラン・国連世界食糧計画(WFP)事務局長

会見メモ

シーランWFP事務局長が記者会見し、世界の飢餓問題と取り組む課題を話した。

シーラン事務局長は日本がWFPへの第4位の支援国で、民間からの寄付も多いことに謝意を示した。世界の食糧需給について、世界­の人口にとって現在、十分な生産ができているのに、食糧にアクセスできない人が10億人いると説明。WFPは飢えた人々に食糧を­結びつけ、各国政府とともに解決策を探る、と述べた。WFPの食糧支援から卒業した国が36カ国を数え、ベトナムや中国も20年­前はWFPに依存していたと指摘した。栄養不良の子どもが2億8000万人もいると紹介し、学校給食を普及させれば子どもの飢餓­に終止符を打つことができると強調した。北朝鮮の食糧危機についての質問には、北朝鮮の子どもの30%~50%が栄養不良で、食­糧が100万トン不足していると述べ、訪日後、北朝鮮を訪れWFP支援事業の現場を調べる予定を明らかにした。
司会 日本記者クラブ企画委員 瀬川至朗
同時通訳 澄田 美都子 吉國 ゆり


国連世界食糧計画日本事務所のホームページ
http://www.wfp.or.jp/index.php
WFPのホームページ(英語)
http://www.wfp.org/about

会見リポート

問題は食糧へのアクセス

小暮 宣文 (日本農業新聞客員論説委員)

就任の半年後に穀物の国際相場が急騰、7500万人以上が新たな飢餓に陥った。しかし、米国務省や国連での豊かな国際経験を生かし、08年以降も毎年70カ国以上の約1億人に食糧支援を続けている。各国から寄せられる任意の拠出金は約42億ドル。それでも支援量は過去20年で最低レベルだけにさらなる支援要請が役割の一つ。

会見時間が30分前倒しされたのも官房長官との会談が急きょ、セットされたため。昨年、約2億200万ドル(約184億円)を拠出、世界4番目の支援大国となった日本政府への現状説明は欠かせない。また、企業や団体からの寄付を年間約5億円から30億円にまで増やす計画を打ち出したNPO法人・国連WFP協会会長とも会談するなど多忙だ。

食糧支援を求める人は世界で10億人近くにも及ぶ。7人に1人が1日に必要な食べ物さえ確保できない。「世界には十分な食糧がある。紛争や自然災害、価格高騰などによってアクセスできないことに問題がある」。特に、犠牲となるのが女性と子ども。飢餓が主な原因で毎日2万5000人が命を落とすが、このうち5歳以下が半数以上を占める。韓国、中国を歴訪後、100万トンの食糧不足が見込まれる北朝鮮に入る。「60万人の妊婦や子どもに手を差しのべたい」と意気込むが、食糧が確実に彼らの手元に届くか不安は残る。

厳しい世界の現状でも自信がにじむ。「われわれが活動を始めて以来、36カ国の飢餓を解決した。中国やベトナムもいまや食糧支援を受けていない」と胸を張る。世界人口の増加や途上国の食生活の変化を考えれば、今は十分な食糧も絶対量不足に陥る可能性がある。金銭的な支援は欠かせないが、6割を輸入に頼る日本、足元の食生活を見直すことが支援につながることも自覚したい。

ゲスト / Guest

  • ジョゼット・シーラン / Josette Sheeran

    国連世界食糧計画(WFP)事務局長 / Executive Director of the United Nations World Food Programme

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