会見リポート
2010年09月24日
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舘田一博・東邦大学准教授/賀来満夫・東北大学教授
会見メモ
日本感染症学会で多剤耐性菌と院内感染対策に取り組む舘田一博・東邦大学准教授と賀来満夫・東北大学教授(発言順)が話し、質問に答えた。
まず、多剤耐性菌について舘田一博准教授が緑膿菌、NDM‐1、アシネトバクター、MRSAなどのメカニズムや特徴を語った。こうした細菌は身の回りに存在することがある、という。院内感染は起こりうると考えて対処するよう求めた。NDM-1の場合、違う菌に遺伝子が移るため、チフス菌、赤痢菌、コレラ菌など強毒性の細菌に広がる可能性を指摘した。
賀来満夫教授は院内感染をどう防ぐか、東北大での実践や欧米の対策を踏まえて説明した。耐性菌は保菌者でも発症しない場合があり、検査しなければ検出されない。知らない間に感染の拡大が起こることがあり、病院は感染対策チーム(ICT)を作りリアルタイムに対応する仕組みを作るよう訴えた。
メディアの報道のありかたや取材の力点についても語った。
司会 日本記者クラブ企画委員 宮田一雄(産経新聞)
日本感染症学会のホームページ
http://www.kansensho.or.jp/
会見リポート
多剤耐性菌の全体像と課題
木村 達矢 (読売新聞東京本社科学部)
帝京大学病院などで問題となった多剤耐性菌。過去にもたびたび話題となったが、アシネトバクターや緑膿菌など、普段なじみのない細菌が登場するほか、抗菌薬は多くの種類が存在するし、感染防止対策は一筋縄ではいかない。極めて分かりにくい複雑な問題であると言える。
今回、2氏の講演は、問題の全体像を示しながら、すっきりと課題を整理した。聴講者の理解はかなり深まっただろう。
耐性菌の専門家である舘田氏(写真=左)は、抗菌薬の切り札的存在である「カルバペネム系」の薬さえも効かない多剤耐性菌が増えていると指摘。この多剤耐性遺伝子が、赤痢菌やチフス菌など強毒性の細菌に移行すれば、健康な人でも治療法のない病気を発症する危機的な状況になる。
舘田氏は、耐性菌との闘いは「永遠に続く、勝ち目のない闘い」と表現する。だが、「菌の特徴を把握すれば効果的に対応できる」とも強調する。耐性菌をなだめすかしながら、うまく共存していく方策を早急に検討する必要があるだろう。
続いて、賀来氏は病院内での感染制御の実例を紹介した。強く訴えたのは、耐性菌の発生にリアルタイムに対応する重要性だ。東北大では、院内の感染対策チームが常に耐性菌の発生状況を監視し、医療従事者に手洗いなどの感染防止対策や、抗菌薬の使い方などを逐次指導する。
医療従事者だけ気を付ければいいのではない。「患者や家族も手洗いなどをきちんとやらないといけない」。地域の医療機関が、社会全体と連携することも大事だ。「そのためには、メディアの果たすべき役割は極めて大きい」と賀来氏は締めくくった。その言葉を肝に銘じて、今後の取材に当たりたい。
ゲスト / Guest
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舘田一博 / Kazuhiro Tateda
日本 / Japan
東邦大学准教授 / M.D., Ph.D., Toho University
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賀来満夫 / Mitsuo Kaku
日本 / Japan
東北大学教授 / M.D., Ph.D., Tohoku University
研究テーマ:多剤耐性菌と院内感染対策