2010年09月15日 00:00 〜 00:00
リチャード・アーミテージ・元米国務副長官

会見メモ

ブッシュ政権で国務副長官を務め、知日派として知られるリチャード・アーミテージ氏が記者会見し、日米関係や中国、インドなどア­ジア情勢について語り、質問に答えた。

アーミテージ氏はまず、前日の民主党代表選で再選された菅直人首相を祝福し、転じて米国の11月の中間選挙でオバマ政権が苦戦し­ている現状を説明した。尖閣諸島の中国漁船事件に関して、冷却化しているとみられている日本と米国の関係を中国はテストしている­、との見方を示した。日本は、たとえば日米の陸海共同演習を行い、中国へ微妙なメッセージを送ることが効果的だと述べた。菅首相­には、ニューヨークで予定しているオバマ大統領との首脳会談で日米同盟への不安を取り除くメッセージを出すよう求めた。普天間問­題では「解決は難しいが不可能ではない。当事者に意思があれば同盟維持の解決策がみつかるだろう。普天間だけでなく、より大きな­戦略を話すべきだ」と語った。オバマ大統領が11月訪日時に広島を訪問する可能性について、「もし大統領に聞かれたら、いまは行­くべきではない、もっと重要な問題があるからだ、と答えるだろう」と述べた。北朝鮮、韓国やインド、東南アジアについても語った­。
司会 日本記者クラブ企画委員 高畑昭男(産経新聞)
通訳:西村好美、森岡幹予(サイマル・インターナショナル)

アーミテージ・インターナショナルのウェブサイト
http://www.armitageinternational.com/index.html

(同時通訳です。日本語は左チャンネル、英語は右チャンネル)
English right channel、Japanese left channel

会見リポート

日米同盟の“冷却化”に直言

高畑 昭男 (産経新聞論説副委員長)

アーミテージ氏といえば、米国の知日派の中でもとりわけ強力な「日米同盟」支持者で知られる。それだけに、司会を務めて印象に残ったのは、尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件で「日米関係が冷却する中で、中国はどこまで許されるか試そうとしている」と指摘したことである。

中国の意図や狙いについては全く同感だ。その半面、「冷却(CHILL)」という言葉が何度も使われたのは、同盟の現状に強い危機感を示そうとしたのではないか。この時点で「冷却」と断じたのは、それなりに思い切った表現だと思う。

前回は現役の国務副長官時の2004年2月にクラブで会見し、「言葉だけでなく、行動が試される」という小泉純一郎首相(当時)の発言を引用して自衛隊のイラク派遣を賞賛していた。ブッシュ・小泉時代の日米同盟を「黄金時代」と呼ぶ人も少なくなかった。

それから6年しかたっていない。それなのに、米軍普天間飛行場移設問題の迷走に象徴されるように、同盟の基盤が空洞化し、両国の信頼関係も荒廃しかけているとすれば、落胆しないほうがおかしい。

「同盟冷却」は、日米だけの問題にとどまらない。尖閣沖の事件で氏が「南シナ海の領有権紛争でベトナムなどへの中国の警告」とも分析したように、日米同盟が弱体化すれば、東南アジア諸国も中国の無法な行動にひとたまりもあるまい。

最後の質問で、クリントン国務長官が外交演説の中で頼れる同盟国の順番を「韓国、日本、豪州」とし、日本を二番目に置いたことについて「米国市民でそんな違いがわかる人はひとりもいない」と会場を笑わせたのはいかにも愛嬌だった。

それでも、氏の本音は「同盟の危機」を直言することにあったのではないかと感じている。

ゲスト / Guest

  • リチャード・アーミテージ / Richard Armitage

    アメリカ合衆国 / U.S.A

    元米国務副長官 / a former United States Deputy Secretary of State

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