2010年08月23日 00:00 〜 00:00
林文子・横浜市長「地域深考」8

会見メモ

シリーズ企画「地域深考」⑧で林文子・横浜市長が「現場発 横浜の新たな大都市制度――私の考えるこれからの地方自治」というテーマで話し、質問に答えた。

自動車販売やダイエーの経営者から市長に転身して1年たつ林市長は、企業と役所の「文化の違い」「組織の違い」を実感した、と市­長の経験を語った。「横浜市には営業部がないんです」と驚き、企業誘致の専門チームを作り企業を訪ねて横浜への進出を求めている­という。
人口370万人の大都市横浜が抱える課題とテーマを列挙し、県の仕事も政令指定都市として担当しているのに支出の3分の2は市が­負担しなければならないといった「二重行政」の問題点を指摘した。その上で、地方自治制度を変える必要があると訴え、府県から独­立し、役割と仕事に見合った税財源を持つ新しい大都市制度の創設を提案した。また、11月に横浜市で開催されるAPRCの準備に­ついても説明した。

司会・日本記者クラブ企画委員 西川孝純(共同通信)

横浜市のホームページ
http://www.city.yokohama.lg.jp/front/welcome.html


会見リポート

「共感と信頼」の市政

鎌田 司 (共同通信社編集委員兼論説委員)

前任者の突然の辞職に伴う市長選挙に初当選、人口368万と日本最大の基礎自治体のトップに就任して1年。直前まで大手自動車販売会社社長を務め、19ある政令市長では唯一の企業経営者出身、女性では2人目。何かと注目される存在だ。

「選挙は大変な経験だった。人間性を試された」と振り返る。選挙後は政治家を見る目も違う。「議員は市民の暮らしや横浜のことを真剣に考えている。会派はあるがゴールは同じ」という。今のところ議会との関係はスムーズなようだ。

ビジネスは「共感と信頼モード」が欠かせず、市政運営でもベースになるという。もっとも「政治家出身の市長は相手を論破しようと『戦闘モード』の人が多い」と見る。そういう目からは、市民税減税を掲げ議会と対立を深める河村たかし名古屋市長の行動力を評価しながらも、不可解に見えるところもあるようだ。「行政サービスにはそれなりの対価が必要で減税は無理。足元でスピーディーにやるべき課題があり対立は時間の無駄」と結構厳しい。

政治家出身ではないが、橋下徹大阪府知事の「大阪都構想」も、「基礎自治体がどうあるべきかが最初で、市民から考えないと」と懐疑的。

自動車セールスなどで培った「現場主義」で、50カ所の保育園や各区役所など150カ所を職場訪問した。職員とは直接触れ合う。「やりたいことを伝えるには職員とのコミュニケーションが不可欠」という。

368万横浜市の潜在力を発揮するための財源移譲を求め、大阪、名古屋両市と共同提案の「特別自治市」など大都市制度改革を訴えた。水ビジネスを含む都市技術の海外への売り込みにも意欲を示した。

この1年は助走期間。市民、職員、議会一体の「チーム横浜」のリーダーとしての真価がこれから問われる。


ゲスト / Guest

  • 林文子 / Fumiko Hayashi

    日本 / Japan

    横浜市長 / Mayor, City of Yokohama

研究テーマ:地域深考

研究会回数:8

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