2010年08月20日 00:00 〜 00:00
パトリック・ホノハン・アイルランド中央銀行総裁

会見メモ


ギリシャ危機以後のアイルランド経済と通貨について、訪日したホノハン・アイルランド中央銀行総裁が記者会見した。

ホノハン総裁は、通貨ユーロについて、「欧州各政府は広範な行動をとり、ユーロ安定に強い政治的コミットメントを示した」と説明­した。アイルランドの財政状況について、「政府はロードマップに基づき、継続して是正措置をとっている。財政調整の維持を楽観し­ている。アイルランド社会も調整の必要性を意識している」と述べ「リセッションは底入れし、2011年には成長を取り戻すという­予測が多い」と楽観的な見通しを強調した。さらに「ユーロ圏がもたらす便益をどう活用するか、参加国によって幅があった。全体と­して自己満足や漫心もあり、今回、不均衡が露呈した。ヨーロッパ全体にとってめざまし時計となった」と語った。
司会:脇祐三・日本記者クラブ企画委員(日本経済新聞)
通訳:池田薫 (サイマル・インターナショナル)

英文スピーチ
http://www.jnpc.or.jp/files/opdf/466.pdf

Notes for Press Conference-Ireland Issuesのサイト
http://www.jnpc.or.jp/files/opdf/466.pd


会見リポート

「ケルトの虎」復活宣言

飯田 香織 (NHKニュース「Bizスポ」キャスター)

アメリカ経済の減速に注目が移る中、会見の前の週に再び世界の目がヨーロッパに向いた。ギリシャと並んで財政悪化が懸念されているアイルランドが、大手銀行に追加の支援をすると発表。財政赤字が一段と膨らむのではないか?ユーロ安が進んだ。ホノハン総裁の会見は、グッドタイミング。総裁は、アジア各国をまわって投資家に「アイルランド経済は心配ない」というメッセージを伝えようとした。

アイルランドは、税制優遇措置を設け、規制を緩和し、世界中からハイテク産業を誘致。「ケルトの虎」として経済成長の象徴となった。ところが不動産バブルが崩壊、金融機関が不良債権を抱え込んだところに世界的な金融危機に襲われた。

総裁は、「2014年までに財政赤字を対GDP比で3%まで縮小するという政府の公約をいったいどう達成するのだろうか、と皆さん思っているかもしれない」と発言。はい、思っていますよ。これに対して「大手銀行に対する公的資金の投入で、財政赤字はことし20%前後に達する可能性もある。しかし、金融システムの正常化に向けた一時的な支出に過ぎない」と強調。その公的資金の投入額は220億から250億ユーロ。金融システムを安定させた上で着実に財政再建を進める、という。また総裁は、ユーロ安で輸出産業は明らかに恩恵を受けていると認めつつ、こうした企業の雇用は限られると懸念。

一方で、アイルランド国債の利回りが高止まりしていることに対して総裁は、「銀行の経営状況や政府の支援について市場への情報開示を徹底していく」と主張。外国人投資家による国債の保有率は80%以上あり、自らがスポークスマンだという意識が伝わった。


ゲスト / Guest

  • パトリック・ホノハン / Patrick Honohan

    アイルランド共和国 / Ireland

    アイルランド中央銀行総裁 / Governor Central Bank of Ireland

ページのTOPへ