2010年08月04日 00:00 〜 00:00
長谷川閑史・国交省成長戦略会議座長(武田薬品工業社長)

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会見リポート

成長戦略の前に国家像を明確に

西根 千博 (日本経済新聞産業部)

バブル崩壊以降、低成長が続く日本。局面を打開できる成長戦略の策定・実行は永田町や霞ケ関でも最重要課題だが、歯に衣着せぬ発言で知られる長谷川氏の政治家に対する視線は厳しかった。

「政権を目指す政党はまず、目指すべき国家像やビジョンを明確にすべきだ」「目指すべき国家像がなければ、何のための成長戦略かわからない」。与野党問わず、多くの政治家にとって耳に痛い指摘に違いない。

拡大しているとされる様々な格差を是正しようとするあまり、国全体が悪平等に陥っているという分析も正鵠を射ている。

「政治が保障すべきは機会の平等であり、機会の平等は結果の平等を保障しない」「重要なのは、敗者復活が可能なセーフティーネットを構築すること」。政治家だけでなく、お上頼みに傾きやすい企業経営者や有権者の意識改革を求めることも忘れなかった。

肝心の成長戦略の中身については、少子高齢化の進行を踏まえ、量的成長を図るため、新興国市場を開拓するしかないと明快だ。その上で、日本企業は先進国市場を高付加価値製品で席巻した成功体験を捨て、大胆にビジネスモデルを転換する必要があると指摘。高機能よりも現地ニーズに応じた価格やデザインを追求していくべきだと訴えた。「今後は新興国で生まれたイノベーションが先進国に波及していくこともありうる」との予測は、売上高の半分以上を海外で稼いでいる武田薬品工業のトップだけあって、説得力があった。

座長を務めた国土交通省の成長戦略会議では、一切の制約なく議論・運営することが許されたという。省益にとらわれず、激論を交わしただけあり、ビザの緩和など既に実行に移された案件もある。省益を代弁する御用委員会ではなく、民間の提言を真摯に取り入れる環境の整備も、民主党政権が主張する政治主導の度合いを計るバロメーターだろう。


ゲスト / Guest

  • 長谷川閑史 / Yasuchika HASEGAWA

    日本 / Japan

    国交省成長戦略会議座長(武田薬品工業社長) / President & CEO, Takeda Pharmaceutical Co. Ltd.

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