2010年08月02日 00:00 〜 00:00
竹中治堅・政策研究大学院大学教授

会見メモ

2010年7月の参議院選挙で「ねじれ」国会となった参議院が果たすべき役割について考えるシリーズ研究会「参議院」。第一回は­、新著「参議院とは何か」(中公叢書)が話題の竹中治堅・政策研究大学院大学教授が歴史を振り返りながら、語った。

衆議院で通った法案をそのまま通す「カーボン・コピー」論。法案審議や政権の連立構成で強い影響力を持つ「強い参議院」論。参議­院については真っ二つに分かれた見方がある。竹中治堅教授は戦後政治史を点検し、2010年7月選挙による参議院のねじれは5回­目だと説明した。参議院が抱える問題として、衆議院で二大政党化が進んだことにより、政権をめぐる争いが参議院で展開されるよう­になったことと、一票の格差が大きくなりすぎたことの2点を指摘した。改革案として、地域ブロックごとの大選挙区制を導入し、二­大政党化を避ける方法を提案した。さらに「二院制か一院制か」の議論では、権力の発動を抑制し法案を作るのに慎重になるためには­二院制がいい、との立場を示した。「参議院議員が何をしているのか、報道機関が行動をモニターして、議員にプレッシャーをかける­必要があるのではないか」とメディアへの注文もあった。
司会:橋本五郎・日本記者クラブ企画委員(読売新聞)

中央公論新社ホームページの「参議院とは何か」
http://www.chuko.co.jp/zenshu/2010/05/004126.html


会見リポート

参議院の監視を強めよ

渡辺 勉 (朝日新聞政治エディター)

「ねじれ国会」とどう付き合うか。『参議院とは何か 1947~2010』を著した竹中氏は、打開の方向を探るのにふさわしいゲストだった。

竹中氏が参議院に関心を持ち始めたのは98年の金融国会から。参議院は衆議院で採決された法案をそのまま通す「カーボンコピー」と思っていたのに強い影響力を発揮したため、「参議院って何だろう」と考え始めた。

従来の研究は、「カーボンコピー」論と「強い参議院」論に二分される。それを乗り越えるため、分析対象の期間を参議院が創設された47年にまでさかのぼった。影響力の評価も参議院での法案審議だけに絞らず、首相指名選挙から組閣、政策立案、衆議院での法案審議にまで広げた。

歴代首相は、「会社のうるさ型」のような参議院との付き合いに手を焼いてきた。参議院は任期が6年と定まっており、解散できないからだ。

竹中氏は、首相と参議院との関係は「米大統領と連邦議会の関係に近い」と語り、その独立性の高さを例証していった。

ねじれ国会を第一期(47~56年)、第二期(89~93年)、第三期(98~99年)、第四期(07~09年)に分け、その間の法案審議や連立工作、人事などを具体的に検証。研究会では駆け足の説明だったが、関心のある方はぜひ著書を読んでいただきたい。

最後に竹中氏は「内閣と衆議院が一体となって行う政策立案を、参議院は抑制している。これは憲法が二院制を設けた目的に合致する形で機能を果たしている」と。ただ、一票の格差が大きいため、「地域ブロックごとの大選挙区制の導入」を提唱した。

参加者から二院制の是非について問題提起があったが、竹中氏は二院制を擁護。「ただ、参院議員が自覚しなければ、『参院不要論』が強まる可能性がある。メディアは参議院の監視をもっと強めるべきだ」と注文も。

菅政権の行方は参議院次第。竹中氏の論考は、参議院はどうあるべきかを議論する格好の素材となるだろう。


ゲスト / Guest

  • 竹中治堅 / Harukata TAKENAKA

    日本 / Japan

    政策研究大学院大学教授 / Professor, National Graduate Institute For Policy Studies

研究テーマ:参議院

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