2010年08月03日 00:00 〜 00:00
森田一・元首相首席秘書官

会見メモ

2010年参院選の争点となった消費税。自民党政権も民主党政権も国民の理解を得るため苦しんできた。シリーズ「消費税はなぜ嫌­われるか」はこの問題にかかわったさまざまな当事者の証言を聞く。第一回は、一般消費税を掲げ総選挙に臨みながら、不本意な結果­に終わった大平正芳首相の秘書官だった森田一・元衆議院議員が語った。

元大蔵官僚の森田さんは大平首相の娘婿でもあり、秘書官として長く支えてきた。森田さんは、クリスチャンだった大平首相が①日中­国交回復②日米の核兵器持ち込み密約③一般消費税――の「3つの十字架」を背負っていた、と説明した。福田赳夫首相との複雑な関­係など当事者だけが知る秘話も交えながら、「国民はわかってくれる」と一般消費税にかけた大平首相の思いを振り返った。

司会:倉重篤郎・日本記者クラブ企画委員(毎日新聞)


会見リポート

大平正芳と一般消費税

倉重 篤郎 (毎日新聞論説室専門編集委員)

国政選挙で民意はまたもや「消費税はノー」との判定を下した。持ち出し方が唐突、制度設計が不十分、発言がぶれた、などいろいろ指摘はされるが、どうして消費税はこんなに嫌われるのか。考えてみれば、大平内閣の一般消費税選挙から死屍累々の歴史ではないか。

この際、過去のいくつかの消費税政局を振り返り、その渦中で格闘された方々にその真実と教訓を語っていただくべく、勉強会シリーズをスタートさせた。

第1回目が大平首相秘書官の森田一氏。なぜ大平氏が一般消費税にこだわったのか、なぜ最後になって腰をひいたのか、最も近くにいた立場から回顧していただいた。それによると、小さな政府論者だった大平氏にとって、蔵相時代の1975年初めて本格的な赤字国債を出したことは、とても許し難き所業だった。クリスチャンでもあった大平氏はこれを自らの十字架として、首相就任を機に一般消費税選挙に打って出た。

もちろん、宏池会は塩崎潤氏(元大蔵省主税局長)らを中心に猛反対、大平氏は「国民は賢明だから一生懸命説明すればわかってくれる」と言って取り合わなかった。だが、やはり、選挙の劣勢から投票日直前になって「消費税は諦めなくていいが、1年延ばして。その間は行政改革をやって欲しい」と当時の齋籐邦吉幹事長らに詰め寄られる。それが「断念」と広がった。

結果自民大敗、40日抗争となり、80年6月に心筋梗塞で死去したわけだが、森田氏は「大平の生涯で言えばあの時断念しない方がよかった」と今は総括する。氏としては、当時地元選挙区に張り付き状態で、身近で進言できなかったことを悔いているかのようだった。

自分の人生は大平氏の秘書官をしていた8年間に燃焼、8期の衆院議員生活も余生でした、という森田氏。その語り口調は大平ヒューマンドキュメンタリーでも見ているようだった。今年は大平氏の生誕100年。大平ファンの方々も大勢来ていた。


ゲスト / Guest

  • 森田一 / Hajime MORITA

    日本 / Japan

    元首相首席秘書官 / a Chief Secretary of one‐time Prime Minister

研究テーマ:「消費税はなぜ嫌われるのか?-死屍累々の教訓

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