2010年07月05日 00:00 〜 00:00
田代真人・メディアナレッジ代表取締役

会見メモ

今年6月、アップル社のiPadが日本でも発売され、今年中にもアマゾン社のキンドルの発売が予想されている。いよいよ日本でも­本格的な電子書籍の時代がやってくるのか・・。田代氏は朝日新聞工務局、学研を経てダイヤモンド社で雑誌編集とWEBでの公開に­携わった経験を持つ。技術と編集の両面に明るい同氏が、日本での電子書籍普及の可能性を語った。さて、その未来は・・。
司会:瀬川至朗・日本記者クラブ企画委員

インプレスジャパン「電子書籍元年」のサイト
http://www.impressjapan.jp/books/2870

資料


会見リポート

電子書籍なお多くの課題

田中左千夫 (読売新聞IT事業部)

5月に単行本『電子書籍元年』を出した田代氏は、電子書籍会社の役員を務める一方、過去には新聞社や出版社での勤務経験も長い。いわば紙媒体、電子媒体双方のスペシャリストだ。

著書のタイトルにみられるように、今年が日本の「電子書籍元年」になるとの見方は少なくない。アップルの新型情報端末「iPad」は、発売前から大きな注目を集め、7月にはソニー、凸版印刷、KDDI、朝日新聞社の4社が電子書籍配信の新会社を設立した。「将来は新聞や本はすべて電子にとって代わり、紙媒体は消えてしまう」といった極論さえ聞こえる。

しかし、電子書籍を事業として成功させるには、なお多くの課題がある。田代氏は、具体的な数字を挙げながら、その難しさを説く。「電子は紙より安い」とみられがちだが、電子でも、デザインや割り付けにかかる費用や、出版社の経費は紙とさほど変わらない。動画などの機能は、むしろ新たなコスト要因となる。しかも、電子書籍は当面は、紙ほどの市場規模を見込めない。「iPadで雑誌を全部出すという出版社もあるが、いつまで続けられるか。新しい発想、ビジネスワークフローが必要」との指摘は説得力がある。

田代氏は続けて、新聞の電子化についても言及。「新聞の紙面レイアウトはお金を取れる価値をもつ」「新聞はパッケージとしての安心感がある。ブログでは得られない、読後の充実感はパッケージゆえ」という意見には、新聞固有の価値や魅力を改めて認識させられた。

電子化の波は避けては通れない。長年親しまれた紙の良さを残しつつ、電子の分野ではどういう方向に打って出るか。「(紙と同様の)習慣化がポイント。習慣化が広告媒体としての価値も生み出す」との助言をヒントにしたい。


ゲスト / Guest

  • 田代真人 / Tashiro MASATO

    日本 / Japan

    メディアナレッジ代表取締役 / Media Knowledge,inc.

研究テーマ:世界の新聞・メディア

前へ 2024年03月 次へ
25
26
27
28
29
2
3
4
5
9
10
11
12
16
17
20
23
24
30
31
1
2
3
4
5
6
ページのTOPへ