2010年07月29日 00:00 〜 00:00
唐池恒二・JR九州社長「地域深考」7

会見メモ

2011年3月に博多~鹿児島中央間の九州新幹線全線開業を控えるJR九州の唐池恒二社長が、シリーズ「地域深考」⑦で九州の活­性化について語った。「アジアとの交流こそ九州の元気のもと」と述べ、韓国、中国の観光客増加に期待を示した。
JR九州のホームページ
http://www.jrkyushu.co.jp/

「大宰府や熊本城を訪れる観光客の8割はアジアから来ている」
唐池社長は、九州と地理的にも歴史的にもつながりが深いアジアの人々が九州を訪れている現状を説明し、韓国、中国との交流をさら­に深めたいと述べた。1988年から続くアジア太平洋こども会議、別府の立命館アジア太平洋大学、JR九州が運営する博多~プサ­ン間の高速船「ビートル」などをとりあげた。中国からの観光クルーズ船が博多港に年間66回、入港し、10万人の中国人が上陸し­ていると紹介。アジアの観光客誘致で九州の各県が競いあう時代ではなく、むしろ九州が一致して東京や札幌、京都と競争し、さらに­上海やソウルをライバルと考える姿勢を打ち出した。2011年3月に九州新幹線の全線開業にあわせ新博多駅ビルをオープンし、九­州の活性化にはずみをつけたいと意気込んだ。
司会:泉宏・日本記者クラブ企画委員


会見リポート

九州に“気”を満たし、元気に

泉 宏 (時事通信出身)

福岡では知らぬ人のいないアイデアマン。親方日の丸の国鉄出身なのに、観光、文化、食と多分野での企画立案をことごとく成功させ、九州の足を支える鉄道会社を活性化させて地域振興に結び付けている。

福岡と韓国・釜山を3時間弱で結ぶ高速船ビートル、人気ふっとうの観光列車「ゆふいんの森」号、そして東京でも人気店となった九州の食と酒を提供する「うまや」。いずれも唐池氏のアイデアでブレークした。「ネーミングの天才」と自称し、「ゆふいんの森」は村上春樹の小説のタイトルともなった「ノルウェイの森」のパクリだと笑うが、そういった自慢話(本人談)にも全く嫌味がない。

「九州はアジアの玄関口、中国、韓国、台湾をはじめ、東南アジアの国々がお客様」と観光コンテンツ充実に持ち前の感性と実行力で邁進している。「九州各地のまちづくりを結ぶ動脈が鉄道」との経営哲学から、新たに九州一周豪華列車構想の具体化も進めているという。もちろんターゲットは国内だけでなくアジアの観光客。「アジアとの交流こそ九州の元気のもと」と力説する。

長年の懸案だった九州新幹線がいよいよ来年3月に全線開業の運び。博多と鹿児島を1時間20分で結ぶ。「旅行でなく、ちょっと隣町に行く感覚」が現実となる。「博多も熊本も鹿児島も観光コンテンツを磨き合って開業による果実を共有できれば九州全体の底上げにつながる」と目を輝かす。

鉄道と地域振興。多くの地域では赤字線の廃線が話題になるが「過疎路線なんて言ってたら、九州のローカル線はみんな切らなければならない」と、次々観光列車の企画も実行中。

すべてに前向きで遊び心満載。とりあえず「うまや」に行って絶品(唐池氏)のざる豆腐とみつせ鶏の焼き鳥で乾杯したくなった。


ゲスト / Guest

  • 唐池恒二 / Koji KARAIKE

    日本 / Japan

    JR九州社長 / President, Kyushu Railway Company

研究テーマ:地域深考

研究会回数:7

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