2010年07月20日 00:00 〜 00:00
アルネ・ウォルター・駐日ノルウェー大使

会見メモ

環境保護や軍縮問題に取り組むノルウェーのアルネ・ウォルター大使がノルウェーの外交や北極海の政策について語り、質問に答えた­。

ウォルター大使は「国連主導の世界秩序に国益を見出している」と国連を重要視する姿勢を示した。世界23位の経済力を持つノルウ­ェーは、開発や環境、平和構築で実績もあるので、「G20に適切な形で加わるべきだ」と述べた上で、「G20は正統性への疑問に­対処し、その行動によって影響を受ける国々の利益を反映するよう進化すべきだ」との考えを示した。
地球環境政策でノルウェーと日本が協力している分野として、森林伐採・劣化に起因する排出削減(REDD: the reduction of emissions from deforestation and forest degradation)や炭素隔離貯留技術(CCS)の開発を取り上げて、説明した。
天然ガスや石油など自然資源が見込まれる北極海と極北地域をノルウェーが戦略的に重視している背景を語った。国連海洋法条約で沿­岸国が大陸棚について自然資源の採掘権を含む主権を持つことから、ノルウェーが主張する大陸棚が200カイリを越え北緯85度と­北極点までわずか550㌔の場所まで続いていることを説明した。ロシアとの関係を「ユニーク」と表現し、「国境を接しているが、­戦争をしたことはなく、プラグマチックに協力している」と述べた。地球温暖化で北極の氷が溶けることにより、アジアと欧州をつな­ぐ新しい航路が作られ、スエズ運河経由より40%も距離が短くなることも紹介した。北極評議会(Arctic Council、北極圏の8カ国で構成)に日本がパーマネント・オブザーバーとして加わることを支持する方針も示した。
日本との関係について「欧州では、中国に焦点があたってきたが、日本を再発見するプロセスに入っている」と述べ、中国と比較しな­がら協力範囲の拡大を求めた。サーモン、シシャモなど水産物がノルウェーの対日輸出の4分の1を占めることや、福祉国家ノルウェ­ーに日本の関心が高まっていること、劇作家イブセン、音楽家グリーグ、画家ムンクら文化交流も広がっていることを強調した。
司会:山崎登・日本記者クラブ企画委員 
通訳:澄田美都子
冒頭スピーチ(英文)
http://www.jnpc.or.jp/files/opdf/460.pdf

ノルウェー大使館のホームページ
http://www.norway.or.jp/

会見資料
http://www.jnpc.or.jp/files/2011/02/29b8b2a6adff89f9da86279e843d1b7c.pdf


会見リポート

持続可能な開発で世界をリード

小川 明 (共同通信編集委員)

ノルウェーは人口480万人の北欧の小国だが、独自の存在感がある。自国の消費量の10倍のエネルギーを生産し、1人当たりのGDPは世界で2番目に高い。持続可能な開発をいち早く打ち出して世界に影響力を発揮している。スピーチのタイトル「持続可能な開発の最先端をゆくノルウェー」から自信がうかがえた。

まず、国連を重視しながら「NATOに加盟し、米国の核の傘に入っている」と、日本との共通性を挙げた。水産国で、捕鯨を続ける点でも似通っている。GDPは23番目で、G20には入っていないが、「金融や石油資源、平和構築への貢献を考えるとノルウェーは含まれるべきだ」と疑問を投げかけた。ノルウェー議会がノーベル平和賞を決めており、昨年はオバマ米大統領に授与したことにも言及した。

温暖化対策では「2030年までに(二酸化炭素の排出と吸収を同じにする)カーボンニュートラルを達成する」と野心的な目標を掲げる。「天然ガスの輸出が世界2位、国内電力はほぼ100%が水力」というから可能性はある。駐日大使になる前に国際エネルギーフォーラムの初代事務局長を4年間務めており、エネルギー問題への造詣は深い。

北極圏にも関心は深まる。「北極では10年ごとに日本の国土の1・5倍の面積の氷が溶解しつつある。膨大な石油と天然ガス開発の視野が広がっている」と語った。ロシアなど沿岸国と協力しながら、国連海洋法条約に基づいて国益を守る姿勢を示した。

ノルウェーは福祉国家で、男女平等も進んでいる。「女性は閣僚の半数、国会議員の39%。世界で最も暮らしやすい。日本が福祉国家になるのに参考になるなら、喜んで経験を共有したい」「ノルウェーも日本を再発見するプロセスに入っている」と、ベテラン外交官らしく友好関係の強化を訴えた。


ゲスト / Guest

  • アルネ・ウォルター / Arne Walther

    ノルウェー / Norway

    駐日ノルウェー大使 / Ambassador of Norway

前へ 2024年03月 次へ
25
26
27
28
29
2
3
4
5
9
10
11
12
16
17
20
23
24
30
31
1
2
3
4
5
6
ページのTOPへ