2010年07月14日 00:00 〜 00:00
菊谷秀吉・北海道伊達市市長「地域深考」6

会見メモ

"北の湘南"とも呼ばれるほど北海道の中でも温暖で積雪の少ない伊達市。高齢者が住みやすいまちづくりを目指して2002年から­「ウェルシーランド構想」を推進してきた。北海道内だけでなく、本州からも移住者が増え、転入者が転出者を上回る人口の"社会増­"を実現している。
3期目の菊谷秀吉市長は「夢と希望がなければ高齢者は生きて行けない」と超高齢化を見据えたまちづくりの理念を語った。

北海道伊達市のホームページ
http://www.city.date.hokkaido.jp/

司会:高橋純二・日本記者クラブ理事(北海道新聞)


会見リポート

「人の誘致」奮闘記

若杉 敏也 (日本経済新聞社産業地域研究所)

「金の卵」ならぬ「銀(シルバー)の卵」を呼び込め──。4年ほど前、地方発のこんな動きに関心が高まった。銀の卵とは、当時60歳のリタイア年齢に到達しつつあった団塊世代を指す。人口減少に直面する自治体が地域活性化を狙ってシルバー世代の移住促進政策に取り組み始めたのだ。

その先駆けの一つが北海道伊達市。北日本としては温暖な気候と豊かな自然環境に恵まれ、「北の湘南」の呼び名がある。菊谷市長は地の利を生かし、「人の誘致」政策の旗を振った。地物の海産物や野菜を販売する朝市が人気を集め、市街地に近接する分譲住宅地がヒットするなど一定の成果を上げている。

2005年に3万5223人だった市の人口は09年に3万7058人と5%増加したが、「成功した」と喜んでばかりもいられない。「移住者が増えると、実は高齢者が増える。いろいろな課題を抱えている、これも事実です」と菊谷市長は話す。

「若い人は定着しない。雇用がないですから」とも明かす。国民健康保険や介護保険など社会保障の負担は増している。高齢者の引きこもりも問題になり始めた。市内の年配女性からは「買い物が不便だ」との声が多く寄せられる。使い勝手が悪いためか、路線バスの利用も伸びない。

そこで伊達市は、予約、乗り合い制の「愛のりタクシー」を始めた。高齢者の外出を後押しするこの施策は徐々に浸透。4年前の導入時に1日平均18件だったのが、昨年は27件にまで利用数が伸びたという。

がん検診や介護予防だけでは、高齢化時代の難問である医療費増大を防げない、と菊谷氏は実感している。 「人は歳を取ると夢と希望がなければ生きていけない。そのためにはコミュニケーションを取り、外へ出ることが大切だ」。伊達市を活性化するポイントは高齢者の足の確保にある。地域おこしには、まず「足元」を見直すことが肝要なようだ。


ゲスト / Guest

  • 菊谷秀吉 / Hideyoshi KIKUYA

    日本 / Japan

    北海道伊達市市長 / Mayor of Hokkaido dandyism city

研究テーマ:地域深考

研究会回数:6

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