2010年07月02日 00:00 〜 00:00
フィリッポ・グランディ・国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)事務局長

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会見リポート

中東支援ないがしろにしないで

前田 英司 (毎日新聞外信部)

1月の事務局長就任以来、初来日となった今回の目的は、日本のさらなる支援を引き出すことだった。世界的な金融危機の影響などで各国からの拠出金は目減りし、今年の予算総額5億8300万ドルのうち、まだ1億ドル以上も確保のめどがない。

外務省によると、UNRWAの活動費に日本が支援拠出している金額は、1995年の約2000万ドルをピークに、現在は200万ドルを割り込むまでに落ち込んだ。

「日本の財政事情が厳しいことは承知している。あるいは、アフガニスタンなど他の地域に対する支援に重点を置いているのかもしれない。しかし、中東の国々から『中立』の立場を評価されている日本の役割は重要だ。ぜひ中東支援をないがしろにしないでほしい」

イタリア出身。難民・人道分野で26年のキャリアを持ち、このうち22年間は国連の活動に携わっている。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)時代にはアフガニスタンやスーダン、シリア、イラクなどで活動した。今、UNRWAの事務局長として取り組むべき喫緊の課題は、2008年末からのイスラエル軍の攻撃で破壊されたパレスチナ自治区ガザ地区の早期復興という。

「そこに『危機』があるのは明らかだ」。イスラエルが繰り返す「ガザに人道危機はない」との主張を一蹴した。エルサレムに駐在し、ガザには頻繁に通っている。水道水は飲めず、汚水は海に垂れ流され、停電は日常茶飯事。商店には品物が豊富にあっても、密輸品だから高くて買えない。「ガザでは『普通の生活』を送ることができないのだ」

一連のガザ攻撃の最中には、UNRWAのガザ事務所も被害を受けた。「イスラエル政府とUNRWAの関係は?」。そう水を向けると、「仕事上の関係さ」と切り返して苦笑していた。


ゲスト / Guest

  • フィリッポ・グランディ / Filippo Grandi

    国連 / The United Nations

    国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)事務局長 / Commissioner-General, UNRWA

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