会見リポート
2010年06月30日
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譚路美・ノンフィクション作家
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会見リポート
中国共産党の「水源」に日本
林 望 (朝日新聞国際報道グループ)
強大化する中国と、どう向き合っていくのか。今、日本が直面する大きなテーマだ。
譚さんは「政治交渉でも、友達づきあいでも『相手が何を望んでいるのか』を見極めれば、対処法は見えてくる」と話した。日本、中国、米国を行き来しながら、複眼的に3国を見つめる作家の言葉だけに説得力があった。
そもそも、私たちは中国をどれほど理解していたのだろうか。譚さんが4月に上梓した『中国共産党を作った13人』は、そんな思いにさせてくれる一冊だ。1921年の中国共産党の「第1回全国代表大会」に出席した13人のうち、4人が日本留学を経験していたという。
中国の変革を志した若者たちが、社会主義という当時最先端の思想を日本で吸収し、持ち帰った。中国共産党の「水源」のひとつが日本にあったと知り、新鮮に思う人は少なくないだろう。日本が中国近代化の「指針」だったことを、私たちはもっと自覚していいのかも知れない。
しかし、21カ条の要求を機に日本が中国への侵略意図を鮮明にすると、留日知識人たちは失望と憤りを胸に大挙して祖国に帰った。譚さんの父親もそうした若者のひとりだった。「留学生たちは帰国船の上でそれぞれが通っていた大学の制服のボタンを外し、投げ捨てた帽子で海面が黒く埋まった」。戦争を経て、今に連なる日中の深い溝の原点を思わせるような情景だ。
それから1世紀近く。中国が発展を遂げた今日でも、「日本は大きな指針であり続けている」と譚さんは言う。隣国の台頭を焦りやおそれで受けとめるのでなく、「相手が我々に何を望んでいるのか」を冷静に考えてみたい。それもまた、譚さんが強調した「歴史から現在、未来を見る」という作業だろうと考えた。
ゲスト / Guest
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譚路美 / Romi TAN
中国 / China
ノンフィクション作家 / Writer of nonfiction