2010年06月30日 00:00 〜 00:00
神野直彦・政府税制調査会専門家委委員長・東大名誉教授

申し込み締め切り


会見リポート

消費税と所得税は車の両輪

小此木 潔 (朝日新聞論説副主幹)

菅直人首相と民主党が掲げる「強い経済、強い財政、強い社会保障」の一体的実現というフレーズの生みの親。「増税をしても、財政支出の使途さえ間違えなければ」という表現も、神野氏が2001年に著した『二兎を得る経済学』にある。カンジアン研究会(菅政権の経済政策を支えるブレーンらに聞く)の初回にふさわしい登場となった。

政府税調の専門家委員会の委員長だが、あくまで個人の見解とことわったうえで、専門家委員会がさきに発表した「論点整理」の概要と、その背後にある理念について、図表を駆使して丁寧に説明した。

まず、「安心して産業構造の転換にチャレンジできるよう、社会的トランポリン(強い社会保障)を張る」ために「借り入れに依存しない」「強固な租税制度(強い財政)」をつくるべきだと説いた。

さらに社会保障の現金給付とサービス給付を組み合わせ、職業訓練で人的インフラを強化しつつ、産業構造の転換を実現しながら成長を図る。そうすれば、「強い財政」を起点に「強い社会保障」と「強い経済」の好循環をつくり出すことが可能になる、と語った。

強い財政への抜本的税制改革の柱としては、税収調達能力と再分配機能の回復、社会保障の安定財源の確保、経済成長を支える財政、地域主権の確立、などを挙げた。

とくに強調したのは「消費税と所得税を車の両輪とする租税制度の構築」で、そうすれば消費税だけに頼る場合に比べて増税幅を小さくできる、との見解を示した。

また、増税分を政府債務の圧縮に使うことよりも、社会保障の強化と成長促進のための財政支出に回すことが大切であるとし、「世界各国が財政赤字を一斉に減らすのは危うい。『合成の誤謬』というケインズの警告をもう一度かみしめるべきだ」と指摘した。


ゲスト / Guest

  • 神野直彦 / Naohiko JINNO

    日本 / Japan

    政府税制調査会専門家委委員長・東大名誉教授 / Charman of the Tax Commission,Cabinet Office, Government of Japan

ページのTOPへ