2010年06月02日 00:00 〜 00:00
渡辺博史・国際協力銀行(JBIC)経営責任者

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会見リポート

カギはアジアでのインフラ投資

吉村 英輝 (産経新聞経済本部)

世界同時不況から、やっと立ち直りつつある日本経済は、これからいかにして稼いでいくべきか。その問いに選んだ講演のタイトルは、「グローバル・インフラ整備への取り組み」だった。現状分析とそれに対する処方箋を理路整然と説明した。さすが、国際経済に通じた元財務官だ。

人口減少という構造問題を抱えた日本の産業が成長するには、アジアの需要を取り込む必要がある。新興国経済の課題は、台頭する中産階級の消費意欲にどう応えるか。そのためには、電力や水道、物流といった社会資本整備が必要で、その資金需要はアジアで8兆ドルとも試算される。

国際協力銀行(JBIC)は、海外資源の開発・取得に加え、わが国産業の競争力維持・向上を担う。民間には重すぎるカントリー・リスクを引き受けるためだ。その点、アジアでのインフラ整備への取り組みはその存在理念に合致する。

JBICは、政策金融改革で、11年に統合した海外経済協力基金を再分離し、平成20年10月に日本政策金融公庫の一部門となった。だが、金融危機で公的金融機関としての存在意義が再認識され、業務範囲も拡大された。政府・与党内では再独立化も真剣に検討されている。

講演は、鳩山由紀夫前首相が辞意表明した直後のタイミングとなった。渡辺氏は、新政権に対するJBICの立ち位置を「まな板の上のコイ」とけむに巻いたが、「身ぎれいにして(改編に)備える」と、自主独立路線への復帰に意欲も見せた。

ただ、「天下り先確保の先祖返り」や「焼け太り」の批判を跳ね返すには、官業のあるべき役割を明確にすることも必要だ。「民間が貸さない傘を貸す機関でありたい」というその言やよし。政策金融のあり方について、いま一度の活発な議論を期待したい。


ゲスト / Guest

  • 渡辺博史 / Hiroshi WATANABE

    日本 / Japan

    国際協力銀行(JBIC)経営責任者 / President & CEO, JBIC (Japan Bank for International Cooperation)

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