会見リポート
2010年04月26日
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中村安希さん「著者と語る『インパラの朝』」
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会見詳録
会見リポート
悠々たるインパラのまなざしで
松本侑壬子 (元共同通信調査部長職)
第7回開高健ノンフィクション賞受賞作は、26歳女子のユーラシア・アフリカ大陸47カ国2年間のバックパッカー体験記。題名の『インパラの朝』は気に入っている。ケニア・マサイマラ国立公園で出会ったインパラ(ウシ科)の悠々たるまなざしが忘れられない。「どこも見てなくて、すべてを見ている目。自分もそんな目線で偏りのない本を書きたかった」。賞は狙っていた。旅の本を書いても出版は難しいが、「賞を取れば出版できる」から。
カリフォルニア大を出て、3年間働いて貯めた180万円を元手に、寝袋や正露丸や口紅と一緒にパソコンやビデオカメラを担いで“危ない”地域を渡り歩いてきた30歳。どんな猛烈女かと思えば、すらりとさり気なく知的な、まさにインパラみたいな若い女性だ。その大きな瞳で、行く先々で出会った庶民の「日本で報道されていたのとは違う」実態を「できる限り主観を排し」、(けっこう大胆なことも)淡々と書いた。
かつて小田実の『何でも見てやろう』や沢木耕太郎の『深夜特急』は男性の海外一人旅のバイブルだった。こちらは、21世紀になって登場した痛快な女性版だ。映画でも1960年代末のアメリカン・ニューシネマの女性版「テルマ&ルイーズ」が登場したのは、90年代に入ってから。今、日本の若者は海外に関心がないといわれているが、「私の周囲の女の子はアグレッシブですよ」。
国境越えに必要とあらば“偽装結婚”もするし、言葉が通じなくてもジェスチャーで「トイレは、一発で分かる」ようにもなった。
旅の基本は“ソフトパワー”。「自分の弱さを隠さず出す。相手と仲良くなることで自己防衛するんです。危機感は絶対必要だけれど」。政治家に聞かせたい名言をさらっと。
ゲスト / Guest
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中村安希 / Aki NAKAMURA
日本 / Japan
研究テーマ:『インパラの朝』