2010年04月27日 00:00 〜 00:00
程永華・駐日中国大使

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会見リポート

「誠意示す」日本語の会見

清水 美和 (東京新聞・中日新聞論説副主幹)

「日本語がわかっているのに通訳を通すと皆さんに、いろいろ言われかねない」。こう笑わせて「誠意を示すために」終始、日本語で会見した。

中国の政府高官には日本語に堪能でも公式発言は通訳に頼る人が多い。発言が誤解を生むことや、後で問題になるのを恐れるためだ。2月末の着任後、初の公式会見を最初から最後まで日本語で通したことに自信と意気込みがうかがえた。

吉林省出身の55歳。創価大留学のほか、駐日大使館で4回勤務したことがあり、日本滞在は通算20年を超える。駐日公使を離任後、マレーシア、韓国の大使を歴任して4年ぶりに日本に「帰った」。

「日本の朝野各界と力を合わせて、日中の戦略的互恵関係を強化したい」と力を込める。進まない東シナ海のガス田共同開発や、中国海軍の日本近海航海などクラブ側が質問する「敏感」な問題に正面から答えた。

「春暁(白樺)ガス田は日本側の出資を受け入れる協力開発で、共同開発という報道には誤解がある」

「中国海軍は上海沖から日本艦艇に追跡された。日本の演習に中国軍が付きまとったら、どう思うか」

公式見解ながら懇切丁寧な回答ぶりには、実直な人柄もうかがえた。

日中関係は表向き静かだが、中国の経済規模が日本に迫り国際関係でも中国の存在感が増すにつれ、日本では中国の躍進に対する焦りにも似た感情が広がってきた。

両国民の交流も拡大し、ささいなトラブルが重大問題に発展するリスクを絶えず抱えている。前任者が日本専門家ではなく言葉の壁があっただけに、新大使の発信力は国民感情改善に向け期待が持てそうだ。

ただ、手堅い外交官の会見に、新しいニュースやヒントがないと不満に思うのは、新聞記者の業にすぎず無い物ねだりと言うべきだろう。

ゲスト / Guest

  • 程永華 / Cheng Yonghua

    中国 / China

    駐日中国大使 / Chinese to Japan, ambassador

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