2010年04月14日 00:00 〜 00:00
河村たかし・名古屋市長「地域深考」2

会見メモ

市民税減税や地域委員会創設など独自の取り組みを進める河村たかし・名古屋市長がシリーズ「地域深考」②で記者会見を行った。「­ナゴヤ庶民革命―主権在民で日本を再生」と題し、市議会と全面対決となっている改革の行方を語った。
名古屋市のウェブサイト
http://www.city.nagoya.jp/
「政治は税金を減らすためにやるものだ。議員の家業化阻止と減税、この二つをやらにゃあ」
河村たかし市長は、「古紙業者だったからトラックの運転席、荷台の目線から考えたい。税金を払うものが苦労し、税金をもらう方が­極楽というのはおかしい」と切り出した。議員や政治家が税金をもらう職業・家業となっているから、税金が多いほうが楽だと簡単に­増税する傾向を批判した。本人は市長の給与を年800万円に引き下げている。
河村市長が推進した「市民税の10%減税」が3月市議会で「1年限定」に修正された。また、小学校・中学校の学区で選挙で選ばれ­た委員が市予算の使い道を決める「地域委員会」もモデル地区で始まったが、市議会が予算案を否決した。河村市長は「これ、通して­もらわにゃ。こんな市議会は全員が辞職すべきだ」と怒り、リコールが成立して解散・選挙になれば、市長を辞職して同日選に立候補­する姿勢を示した。
さらに「議員の党議拘束は官製談合だ」「国債は政府からいえば借金だが、国民からいえば財産の投資先だ」「日本の財政危機はうそ­だ」「日本の議員報酬は外国と比べて高すぎる」と名古屋ことばで熱弁をふるった。

司会:菅沼堅吾・日本記者クラブ企画委員(中日新聞・東京新聞)

会見リポート

庶民革命 決戦は議会解散リコール

斉藤 徹弥 (日本経済新聞地方部編集委員)

鳩山政権の迷走で政治が流動化するなか、首長新党など首長たちの動向に注目が集まる。その1人が名古屋市で市民税減税の恒久化や市議の報酬半減を掲げて市議会と真っ向から対立する河村たかし市長。臨時議会を1週間後に控えた時期だけに「市議会は市民をなめ切っとる」「絶対に許さない」と敵がい心をむき出しにする毒舌が相次いだ。

河村氏が「庶民革命」と呼ぶ改革の柱はまず減税だ。増税阻止を目的で作られた英国議会を引き合いに「減税をやらないなら政治はいらない」と説く。ただ名古屋市の市債発行残高は1兆8000億円を超える。同じく減税論者で日本創新党を立ち上げた山田宏・東京都杉並区長が「名古屋はまず借金を減らすべきだ」と指摘するように異論は根強い。

これに河村氏は「日本が財政危機というのはウソ。国債は国内で消化され、金利も安定している」と反論するが説得力はどうか。金利上昇局面では「その時は政権交代して国債が売れるような政策に変えればよい」と言うだけでは危うさを残す。

改革のもう一つの柱は「議員の家業化」を防ぎ、市民の政治参加を促すことだ。「議員の居心地が良いと長くやりたくなり、長くやるには役所と癒着する」が持論。議員報酬の半減で「政治のボランティア化」を目指す。住民の政治参加を促す試みは小中学校単位で作る「地域委員会」で、選挙で委員を選ぶのは全国でも例がないという。ただ、権限縮小を警戒する市議会の反発で地域委員会を拡充する予算も通っていない。

臨時議会も議会側の勝利に終わり、決戦は住民による議会解散のリコールが成立するかどうかに持ち込まれる見込み。解散に必要な署名は36万5000人分。1年前の市長選で51万票を獲得した河村氏にどれだけの支持が集まるのだろうか。

ゲスト / Guest

  • 河村たかし / Takashi KAWAMURA

    日本 / Japan

    名古屋市長 / Nagoya mayor

研究テーマ:地域深考

研究会回数:2

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