2010年04月12日 00:00 〜 00:00
原口一博・総務相「地域深考」1

会見メモ

原口一博・総務相が「地域主権改革」のテーマで記者会見し、質問に答えた。
日本記者クラブが新たに始めたシリーズ「地域深考」の第1回。

「社会主義的といわれるが、いま手を入れないと再生できない農業や中小企業があるからやっている。むしろ、われわれは『自由の改革』『責任の改革』をめざしている」

「地域主権」を掲げる原口一博・総務相はまず、ナチス・ドイツを生み出した背景には「格差がもたらす統治の危機」があったと切り出し、国民を分断するような格差の是正に取­り組むための「地域主権改革」と位置付けた。工程表を示しながら、2010年夏までに関連法案を成立させると説明した。また「緑の分権改革推進プラン」(原口ビジョン)に­ついても話し、ICT(情報・コミュニケーション技術)を駆使し、2015年までにすべての家庭(4500万世帯)のブロードバンド化など一連の構想を説明した。
質問に答える形で、郵政改革について「『暴走する亀井、とめられない原口』などといわれたが、民営化のソフトランディング・モデルと理解してほしい」と語った。世論調査で­鳩山内閣支持率が下がっていることについては「深刻に考えるべきだ。古い(自民党)政権との違いを実感しないという人もいる。パラダイムのチェンジには時間がかかるが、民­主党自身、古いパラダイムから抜けなければならない。308(議席)の瞬間から劣化が始まる」と危機意識を述べた。
司会:泉宏・企画委員(時事通信出身)

原口一博衆議院議員のホームページ
http://www.haraguti.com/
総務省ホームページの「地方行財政」サイト
http://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/chiho/index.html
総務省ホームページの「緑の分権改革」サイト
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/c-gyousei/bunken_kaikaku.html
内閣府ホームページの「地域主権」サイト
http://www.cao.go.jp/chiiki-shuken/index.html

会見リポート

見えぬ“地域主権改革”の具体像

坪井ゆづる (朝日新聞編集委員)

新たなシリーズ「地域を深く考える」の一番手を務めた。鳩山政権の「1丁目1番地」という地域主権改革の旗振り役だけに、テーマにはうってつけの人物だろう。

だが、地域主権改革の具体像を聞こうと集まった人々には、いささか物足りなかったかもしれない。

地方分権とどこが違うのか──。この問いには答えた。分権という用語には、中央から地方に権限や財源を「分け与える」というニュアンスがこもる。「上」に立つ霞が関が、「下」にいる自治体に恵んでやるという響きがある。

それを地域主権と言い換えることで、改革の主役は霞が関ではなく、自治体の側、それも住民なのだと自覚してもらう。主権者の住民が行動しなければ、世の中は何も変わらないのだから、という解説だった。

そうそう、そうなのだ。「お任せ民主主義」ではいけない、とうなずく。で、どうするのか。当然、次に具体策を聞きたい。どんな政策で、どのような制度設計をするのか。

だが、緑の分権改革、定住自立圏構想、ICT維新ビジョンといったプランが踊ったわりに、各論は奥行きを欠いた。政府は夏に地域主権戦略大綱を決める。そのなかに、法律で自治体の仕事を縛る「義務づけ」の廃止や、ひも付き補助金の一括交付金化、都道府県から市町村への権限移管の道筋をどう描くのか。

具体策を検討中のいま、目立つのは権限や財源を手放すまいとして防御策を練る各省庁の壁の高さだ。それをどう乗り越えるのか。

こうした疑問への答えは、ただひとつ。「決めるのは各省ではありません。鳩山総理が議長の地域主権戦略会議です」だった。各省の抵抗を首相が戦略会議でねじ伏せる。こんな担当大臣のシナリオが実現する日が来るのか。ほんとに。

ゲスト / Guest

  • 原口一博 / Kazuhiro HARAGUTSI

    日本 / Japan

    総務相 / The Public Management Minister

研究テーマ:地域深考

研究会回数:1

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