2010年04月02日 00:00 〜 00:00
瀬谷ルミ子・日本紛争予防センター事務局長

会見メモ

日本紛争予防センター(JCCP http://www.jccp.gr.jp/ )の瀬谷ルミ子事務局長は、 DDR(Disarmament, Demobilization, Reintegration:武装解除・動員解除・社会復帰)の専門家として、アフガニスタンをはじめ世界の紛争地で仕事をしてきた。
2010年4月2日、シリーズ研究会「ユーラシア/アフガニスタン編」で、「DDRを通してみたアフガニスタン」のテーマで話した。

司会:川村晃司・日本記者クラブ企画委員(テレビ朝日)

会見リポート

DDR後 タリバンの影響力増す

遠藤 幹宜 (共同通信外信部)

イスラム教国アフガニスタンは完全な男社会だ。その中にあって、タリバン政権崩壊後の和平プロセスで、2003年6月から約2年間にわたり、日本政府が担当した武装解除・動員解除・社会復帰(DDR)の中心人物として活躍した。長年内戦が続くアフガンで、軍閥から戦車や自動小銃を回収して非軍人として社会へ送り出したDDR。女性ならではの苦労話は出なかったが、交渉で女性が口をきくことは許されず、大使ら交渉担当者に頻繁にメモを渡すなどして百戦錬磨の司令官らから巧妙に妥協を引きだしていったと聞く。

DDRはプログラム通り完了したが、現状を見れば効果には疑問が残る。瀬谷氏は、武装解除によって各地でタリバンの影響力が増したことを認め「(米独が担当する)国軍や警察の地方展開が不十分だった」と指摘。軍と警察の強化が不可欠と説く。

日本の支援の在り方については「逆に現地で活動する人にマイナスの影響を与えることもある」と指摘。海自による給油活動はほとんど知られず、逆に「日本の中立性が保たれた」と手厳しい。政府の方策は「邦人保護の対象となることを懸念し、リスクを負わない決断をしがち」といい、カルザイ政権の中立性が疑問視される中、金だけをつぎ込んでも有効活用されない可能性を訴えた。

5年後のアフガンは①今のまま、外国部隊駐留が続いている②外国部隊が撤退しタリバンが政権の一部に入っている──の2パターンを予測。DDRでの経験を踏まえ、「タリバンとして何を求めているか、妥協の配分のやりとりが大切だ」と指摘。タリバンの政権入りで「特に田舎で女性に対する規制が強まる可能性が高い」として、和解プロセスでうまく交渉していく必要性を主張した。

現在も年の半分をソマリアやスーダンの紛争地で地域社会の支援に当たる瀬谷氏。これからも経験に基づく厳しい提言を続けてほしいと思う。

ゲスト / Guest

  • 瀬谷ルミ子 / Rumiko SEYA

    日本 / Japan

    日本紛争予防センター事務局長 / Secretary General of Japan Center for Conflict Prevention (JCCP)

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