2010年03月29日 00:00 〜 00:00
福武総一郎・ベネッセホールディングス会長

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会見リポート

希望の海に 現代アートの祭典開催

玉利 伸吾 (日本経済新聞文化事業局総務)

夢のある話だった。現代アートで過疎の島々を元気にする。やや浮世離れした構想かなとも思ったが、話をたどりながら、どうも自分の方が大都市中心の発想に縛られていたのではないか、そんな気がしてきた。

「瀬戸内国際芸術祭2010」は、直島、小豆島など7つの島と高松港を舞台に時代の先端を行く美術家や建築家が参加し、作品と共に地域の魅力を世界に発信する企画。教育、介護事業を展開するベネッセとどう結びつくのか疑問だった。しかし、企業人の発想、経営哲学に根ざしていることが分かり、なるほどと納得した。

父親の代で倒産した会社を立て直そうと考えたビジネスモデルが「メッセージ」を売る企業。古今東西変わらぬ、豊かさを求める心、人間の向上心への応援を商品にしよう。この着想が多様な事業を生んだ。

20数年前、地域再生のメッセージを模索する中で、現代美術の持つ力に驚いた。懐かしい風景、自然の中に置くと、都会で見るのとは全く違う輝きを放つ作品群。人口減に悩む島に若者を引き寄せ、お年寄りを元気にした。直島での経験を生かし、瀬戸内海を「希望の海」に、というのが芸術祭の狙いだ。

「変化をチャンスにする」企業家の顔も印象的だった。ベネッセが推進する電気自動車は基幹技術を万人に開放して普及を図る。新システムは産業構造を根底から変える力があると熱く語る。

いずれもベネッセの経営が順調でなければ揺らぎかねないプロジェクトだが、明るい夢に満ちている。「瀬戸内海は私の庭です」。壮大な持論を聞いたあと、大竹伸朗の作品でもある「直島銭湯」に浸かり、ぼんやりと海景を眺めたくなってきた。
 

ゲスト / Guest

  • 福武総一郎 / Souitirou FUKUTAKE

    日本 / Japan

    ベネッセホールディングス会長 / The Director and Chairman of Benesse Holdings, Inc

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