2010年03月23日 00:00 〜 00:00
尾身茂・新型インフルエンザ対策本部専門家諮問委委員長

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会見リポート

地域のフォローアップが課題

熊井 洋美 (朝日新聞科学医療グループ)

“騒動”といっていい流行時の混乱も、「のど元過ぎれば……」というところだろうか。国内はすっかり終息ムードで、紙面でも画面でも「新型インフルエンザ」の文字を見る機会はめっきり減った。メキシコでの発生報告からもうすぐ1年、政府の専門家諮問委員会のまとめ役だった尾身氏の振り返りを、興味深く聴いた。

水際対策で、「成田空港よりも、各地域の保健所で最もエネルギーが割かれた」「渡航者に関心が行き過ぎ、国内対策への切り替えが遅れた指摘は事実」。使い勝手の悪い10ミリバイアルのワクチン問題は「(早く市場に回すための計画だったが)なあなあのメッセージが出てしまった」。接種回数を2回から1回に減らしたときは「(試験成績に)専門家もびっくりした」。

いまだからこそ、なのかも知れないが、予想以上に率直な物言いに、少々驚いた。

とりわけ、施策の決定をどのように国民に伝えるのか、などリスク・コミュニケーションのあり方に、尾身氏が多くの課題を見いだしていたのが印象に残った。

異動により昨秋から新型インフル取材に加わった私は、施策が打ち出されるたび新たな対応に追われる自治体や地域医師会、最前線で踏ん張る開業医たち、ワクチンの予約に躍起になる親たちの姿を見させてもらったが、現場のニーズに柔軟に対応しているとはとうてい言い難い施策に歯がゆさを感じてきた。

「次回解決するべきは、地域のフォローアップだ」

尾身氏のこの言葉は心強く響く。3月31日にスタートしたばかりの政府の新型インフル総括会議できちんと反省がなされ、次の流行に向けて、地域の現場が疲弊しない仕組み作りにつながるのかどうか。議論の行方をしっかりと見つめたい。
 

ゲスト / Guest

  • 尾身茂 / Shigeru OMI

    日本 / Japan

    新型インフルエンザ対策本部専門家諮問委委員長 / Chairman of committee of consultation of specialist of new influenza task force

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