2010年03月04日 00:00 〜 00:00
添谷芳秀・慶応大学教授

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会見リポート

ミドルパワー外交とG2論再考

谷田 邦一 (朝日新聞論説委員)

国内総生産(GDP)で世界のトップ3を占める日米中は、これからどのような3カ国関係を築くのか。

「ミドルパワー論」の年来の提唱者である添谷氏は、その行方を考察した上で、日本外交として、アジア諸国との多国間協調を一層深めつつ米中関係に向き合う必要を説いた。

とりわけ重要なのは、米中関係をどのように見るかだろう。添谷氏はそれを「戦略的な共存を模索しながら、目指す方向性が決定的に違っている同床異夢」と喝破する。

米中が国際社会を主導するという「G2論」も、実は中国を国際システム内のプレーヤーと位置づけているものの、中国異質論を前提にした主張だと解説。「米中が結託して世界をマネージする意ではない」と日本の不安を払拭してみせた。

とはいえ多国間協調を基軸にするオバマ政権にとって、中国は頼りにせざるをえない重要パートナーだ。国際システムは今後、中国の価値観の影響を大きく受け「不安定な状況がかなり長期化する」と予測する。

そうした潮流にあって、日本はどうすべきか。協力が可能なことはとことん協力する。ただし落とし穴にはまらないことが大事だという。

くせ者は、中国外交が今なお引きずる国家主義やナショナリズムなどの近代性だ。歴史認識などの領域で「中国の近代性を真に受けて同じ次元で勝負すれば日本の負けになる」と用心を呼びかける。

対中戦略の要諦は、豪州やASEAN、韓国との安全保障協力をさらに進め中国台頭を管理することにある。ここは持論に引きつけ東アジア諸国との協力基盤の強化を訴えた。

中国で教鞭をとる体験をもとに披露した「対中市民社会戦略」は興味を引いた。中国社会に芽生えつつある多元性に着目し、中国人同士が議論する環境を作るのだという。日本が具体的にどのようにかかわるのか、詳しい説明が待たれる。
 

ゲスト / Guest

  • 添谷芳秀 / Yoshihide SOEYA

    日本 / Japan

    慶応大学教授 / Professor of Keio University

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