2010年02月25日 00:00 〜 00:00
木邨洗一・国際協力機構前アフガニスタン事務所長

申し込み締め切り


会見リポート

開発援助の進展には治安改善必要

脇阪 紀行 (朝日新聞論説委員)

21世紀の世界が安定するかどうかのカギを握るアフガニスタン。国際協力機構(JICA)の現地責任者として2年余り、首都カブールに駐在し、1月に帰国した。

日本政府は向こう5年間で最大50億ドル(約4500億円)の支援を約束している。「これほど巨額の援助ができるのか」という質問が出たが、現地の治安悪化のせいで当面は、国連経由でアフガン警察官の給料を支払うといった治安機構の整備支援を柱にせざるをえない。

その中でJICAは、教育や医療などの従来の支援に加えて、新たに、カブール北部への首都圏拡充構想と、北東部クンドゥズ州への農業支援の拡大を進めるという。

首都圏拡充構想では昨年マスタープランを作り、水の供給路の建設など百件以上のプロジェクトを提案している。大量の雇用を作り出すとともに、「平和の象徴としての首都カブールをつくりたい」と語った。

もう一つの農業支援は東部の町ジャララバードで取り組んできたコメ増産支援の経験が土台となる。若い頃に英国に留学し、農業管理学を学んだとあって、「紛争で途絶えた稲作技術をよみがえらせれば、収量は増えるはず」と熱っぽい。

しかしこうした取り組みが進展するためには、結局、アフガンの治安状況の改善を待つほかない。

カブールでは自爆テロ攻撃が頻発し、日本人専門家は昼間も外を歩けず、外出時は必ず防弾車を使うことになっている。「なにか事件が起きれば必ず無線連絡で全員の安否を確認した」と、スタッフの安全確保に責任を持つ所長らしい言葉も。

ただ最後に一言と問われて、「日本での報道によって、アフガンは危ない国だというイメージができている。普通の人々が生活し、開発の現場で日本人が活動する姿も伝えてほしい」。危険の中で頑張ったからこその思いなのだろう。
 

ゲスト / Guest

  • 木邨洗一 / Senitsi KIMURA

    日本 / Japan

    国際協力機構前アフガニスタン事務所長 / The former Afghanistan office manager of Japan International Cooperation Agency .

前へ 2024年03月 次へ
25
26
27
28
29
2
3
4
5
9
10
11
12
16
17
20
23
24
30
31
1
2
3
4
5
6
ページのTOPへ