2010年02月22日 00:00 〜 00:00
モハンマド・ファヒーム・ダシュティ・カブール・ウイークリー紙発行責任者

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会見リポート

安定化への道筋─メディアの役割

遠藤 幹宜 (共同通信前カブール支局長)

「私はアフガン人。民族の区別はしたくない」。多数の民族が入り混じり、長年対立が続くアフガン。自らの民族を問われ、こう言い切った。2001年の米同時テロ以前、タリバンと戦っていた国民的英雄マスード元国防相の懐刀。同時テロ2日前の元国防相暗殺時に同席し、重傷を負った過去を持つ。現在発行する週刊紙は元国防相が創刊したものだ。タリバン政権下では新聞1紙、ラジオ1局しかなかったが、現在は活字メディア700、テレビ20局、ラジオは150局にまで増えた。発行部数1万部の「小さな新聞」だが、経済的には完全に独立しているといい、武装勢力や麻薬密売組織はもちろん、カルザイ政権や米国も厳しく批判していると自負する。

タリバンがアフガンを再制圧すれば、似た思想を持つ隣国パキスタンの軍部からタリバンに核兵器がわたるとの主張はいささか突飛だが、安定化への道筋は論理的に聞こえる。

タリバンを「根っからのタリバン」と多数の「参加せざるを得なかったタリバン」の2つに分類。前者は交渉不可能だが、後者を現政権側に取り込むのは可能だと訴える。

もめごとが起きて提訴しても、裁判官にわいろを要求される現状では、すぐに裁定してくれるタリバンに頼ってしまう。最大民族パシュトゥン人中心のタリバンは、長年にわたり国を支配してきた民族の自尊心をあおり、教育のないパシュトゥンの若者を取り込んできた。最大の課題は民族間の対立解消で、さらに貧困の解消、政府の統治能力の回復、汚職の撲滅を進められれば後者を懐柔でき、根っからのタリバンも交渉に応じざるを得ないと主張する。

米軍増派後も前途が多難であることに変わりはなく、安定への道のりは極めて遠い。教育が行き届いているとは言えないアフガンで今後、国民に道筋を示す公正なジャーナリズムの役割は一層重要になるだろう。
 

ゲスト / Guest

  • モハンマド・ファヒーム・ダシュティ / Mohammad Faheem Dashty

    アフガニスタン / Afghanistan

    カブール・ウイークリー紙発行責任者 / Person in charge of Kabul weekly paper issue

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