2010年02月19日 00:00 〜 00:00
ワンガリ・マータイ・ノーベル平和賞受賞者

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会見リポート

市民の力への信頼が原動力

梁田 真樹子 (読売新聞国際部)

最近、環境問題をめぐる動きとして記憶に新しいのは、昨年12月にコペンハーゲンで開かれた国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)だろう。1997年のCOP3で締結された京都議定書に代わる法的な枠組みはおろか、全加盟国が加わる政治的な合意も達成できなかった。今後の進展に対して、悲観的な見方を示す向きも多い。

だがマータイさんは、「COP15では、主要国すべてが、『気候変動は人間の活動が引き起こした』という点に同意していた。京都よりも前進」と前向きな評価を行い、関係国の指導者を鼓舞。同時に、「とくに民主国家で、市民が温暖化対策を促す世論を形成できるよう教育を行い、政治家を動かすことが必要」とも訴え、市民の行動の大切さも強調した。

マータイさんは、環境問題に関する日本のリーダーシップに期待を示し、来日も5回目。今回は、京都の知恩院を訪れ、浄土宗の「共生」(自然との共生、尊重)という概念を初めて知ったことで、その思いをさらに強めたようだ。日本では今年、名古屋で生物多様性条約第10回締約国会議が開かれるが、「COP3のような将来への展望を示せるよう期待している」と語った。

マータイさんは2004年にノーベル平和賞を受賞して以降も、国連平和大使や、世界で第2位の面積を誇るアフリカ・コンゴ川流域の熱帯雨林保全の親善大使を務めており、さらに母国ケニアのナイロビ大学で、「ワンガリ・マータイ平和環境問題研究所」を設立。活動の場を一層広げている。会見で印象的だったのは、その精力的な活動を支えているであろう、前向きで柔軟な考え方と、市民の力への信頼だ。その市民の力に働きかける立場にある我々、報道に携わる者たちに向けても、熱いメッセージが発せられたように感じた。
 

ゲスト / Guest

  • ワンガリ・マータイ / Wangari Maathai

    ケニア / Republic of Kenya

    ノーベル平和賞受賞者 / Nobel Peace Prize winner

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