2010年02月15日 00:00 〜 00:00
平松茂雄・元杏林大学教授

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会見リポート

常識が当てはまらない国

勝股 秀通 (読売新聞編集委員)

「常識が当てはまらない国」と平松氏は中国を評する。それを裏付ける逸話として、長年、中国のしたたかな海洋戦略を研究してきた平松氏は、たくさんの引き出しの中から、日本最南端の沖ノ鳥島(東京都)をめぐる中国の主張の様変わりぶりを取り上げてみせた。

岩礁に囲まれ、満潮時はほとんどが水没する同島に対し、現在中国は、国連海洋法条約で200カイリの排他的経済水域(EEZ)が認められない「岩」だと主張する。ところが20年ほど前、日本が「島」を維持するために施した水没防止措置を持ち上げ、「いくら金をかけても惜しくない。実に素晴らしい」とまで絶賛していたことを明らかにした。

信じられないような主張だが、当時、南シナ海の南沙諸島への進出をもくろむ中国にとって、日本が講じた手立ては格好のお手本だったという。中国はその言葉通り、例えば、大人数人立つのがやっとの「島」の上に掘っ立て小屋を造るなどして居住できることを証明し、領有権を獲得していった。しかし、今となっては、東シナ海から西太平洋に勢力圏を延ばし始めた中国にとって、沖ノ鳥島が「島」であることは許されない。「島」なら周辺海域での行動が著しく制限されてしまうからだ。

国際法の規定さえも自分に都合よく解釈する、まさに「常識が当てはまらない国」だが、むしろ平松氏は、沖ノ鳥島の状況を放置し続ける政府の無策ぶりを嘆く。続けて、迷走する米海兵隊普天間飛行場の移設問題にも触れ、「今は黙ってみているが、中国は心底、海兵隊がいなくなってほしいと願っている」と分析する。それだけに、平松氏は鳩山政権内での議論の行方を危ぶみながら、「沖縄は戦略的な要衝にもかかわらず、政治には考えがなさ過ぎる」と締めくくった。

どうやら「常識が当てはまらない」のは中国だけではなさそうだ。
 

ゲスト / Guest

  • 平松茂雄 / Shigeo HIRAMATSU

    日本 / Japan

    元杏林大学教授 / Former professor of Kyorin University

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