会見リポート
2010年02月02日
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フェリペ・カルデロン・イノホサ・メキシコ大統領
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会見リポート
安全な国に 憂国の大統領
中川 千歳 (共同通信外信部)
冒頭に切り出したテーマは、11月に自国で開催されるCOP16でも、日本との経済協力でもなく、2日前にメキシコ北部シウダフアレスで起きた高校生らが犠牲になった集団殺害事件だった。
民家で開かれたパーティーに武装集団が押し入り、銃を乱射。14人を殺害し、14人にけがを負わせた。米国境に接する同市は麻薬組織の犯罪が深刻で、今回の事件でも組織の関与が疑われている。
カルデロン大統領は事件の一日も早い解決と、警察機構の強化による犯罪組織の撲滅へ強い決意を見せた。
治安対策は政権発足当時から大統領が掲げてきた最重要課題だが、昨年7月の中間選挙で与党が大敗したのは、治安対策を強調しすぎ、国民の関心が高い経済対策を重視しなかったからだとの声も出た。その後大統領は軌道修正を迫られ、経済、雇用対策を治安対策よりも前面に押し出すようになったという指摘もあったが、治安回復にかける情熱はまったく揺らいでいないと感じた。
メキシコ紙ウニベルサルによると、国内の組織犯罪の犠牲者が今年に入り既に1千人を超えているという。一国の元首が地球の裏側で「国の恥」とも言える治安の悪さを再三強調する姿には驚きも感じたが、それだけに問題の深刻さを物語っていた。
大統領はまた、ゴールドマン・サックスが2050年にメキシコが世界第5位の経済大国になると予測しているというデータも披露した。海外投資を呼び込む環境作りのためにも犯罪組織との闘いは急務だ。
「何よりもメキシコを安全な国にしたい」と重々しく述べたその顔には「憂国」という文字が浮かんでいるようだった。
ゲスト / Guest
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フェリペ・カルデロン・イノホサ / Felipe de Jesus Calderon Hinojosa
メキシコ / Mexico
メキシコ大統領 / President of Mexico