2010年01月22日 00:00 〜 00:00
趙宏偉・法政大学教授

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会見リポート

アフガンめぐる中国の思惑

塚越 敏彦 (共同通信社アジア地区総代表)

地政学的に重要な位置にあるアフガニスタン。進出した大国はしばしば根強い抵抗運動に苦しめられてきた。英国しかり、旧ソ連しかり。そしていま米国もまた、タリバン復活が顕著なアフガンに頭を痛めている。そのアフガンに、隣接する中国がどのような思惑を抱いているのか。趙宏偉教授の分析は明快だった。

アフガン新戦略で2011年7月の撤退開始目標を示したオバマ政権。撤退後を見据え、中国に地域安定の肩代わりを陰に陽に求めている。「中国は既にアフガンへの関与を覚悟している」と教授は見る。

具体的には、国連安保理でのアフガンPKO決議採択を待って、周辺国会議などを開催。NATOに代わる新たな枠組みのもとで、中国軍を派遣する可能性が大きいという。

ロシアと共に、上海協力機構を中央アジアにおける有力な集団協力組織に育て上げてきた中国。米国の衰えを奇貨として、この機構をベースに西南アジアへ勢力圏を拡大しようとの戦略が透けて見える。

アフガン関与の代償として、中国は米国から、中印関係と台湾問題で譲歩を引き出そうとしている、とも教授は指摘した。

「中国・パキスタンのFTAにアフガンを囲い込み、ミャンマー、スリランカへFTA圏を拡大、インドを孤立させる」「アフガンを請け負う代わりに、米国に台湾と手を切らせる」─。ユーモアのある教授が「妄想」として語った展望は、中国外交にとって本音の願望なのだろう。

気になったのは、2013年に始まる見通しの習近平時代に関する「妄想」だ。「習氏は元将校の軍歴を持ち、解放軍との関係は強い。台湾政策を手ぬるいと見ていた軍は、習氏に強く期待している。江沢民以来の文民政権には終止符が打たれる」。習近平政権の性格次第で、アジア情勢が大きく変わりかねないことには、留意しておくべきだろう。
 

ゲスト / Guest

  • 趙宏偉 / Koui CHOU

    中国 / China

    法政大学教授 / Professor , Hosei University

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