会見リポート
2010年01月18日
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水野和夫・三菱UFJ証券チーフエコノミスト「2010年経済見通し」
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会見リポート
「常識」覆す歴史的アプローチ
河原 仁志 (共同通信経済部長)
だから水野氏の話は新鮮だ。この日の説き起こしは、16世紀から続いた「海の時代」が21世紀に「陸の時代」に変わるという仮説。英、米、日がユーラシア大陸を支配する時代から、中国、インド、日本、豪州などが日本海や東シナ海を内海化する図式へ世界経済の力関係が転換するという。
ではその中で日本はどうすればいいのか。ポイントは、日本国債の利回りが十数年間も2・0%以下で推移している点だと指摘する。「これまで日本は高付加価値化と多機能化で成長を遂げてきたが、国債利回りの長期低迷は、もはや国内に投資機会がほとんどないことを意味する」。さらに「人口が減少する日本経済にとってデフレは与件。金融や財政政策では動かすことはできない」とも。
身もふたもなく聞こえるが、ここからが真骨頂。「日本は成長を目標とする近代化モデルから卒業してゼロ成長モデルに移行するべきだ」と説き、そこに至るカギは、アジア中間層の外需取り込みと環境対策にあるとした。特に環境をめぐっては「ここ数年の日本企業の足かせになってきたのは原油の高騰」と分析。「円高を進めて原油高騰に対抗する一方で、化石燃料を使わない経済社会を真剣に考えるべきだ」と力を込めた。
あまり抑揚のない語り口。でもドキッとするようなことをサラッと話す。「ゼロ成長モデル」「円高促進」といった常識を覆す逆説的な提言も、時間のスケールを広げると不思議な説得力を持ってくる。歴史から切り込む水野流アプローチからすれば、「変わらない常識」こそが日本経済停滞の原因と映っているのかもしれない。
ゲスト / Guest
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水野和夫 / Kazuo MIZUNO
日本 / Japan
三菱UFJ証券チーフエコノミスト / Mitsubishi UFJ Morgan Stanley Securities Co.'s Chief Economist
研究テーマ:2010年経済見通し