2010年01月14日 00:00 〜 00:00
直嶋正行・経済産業相

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会見リポート

FTAは米国より「日中韓」先行

原 真人 (朝日新聞論説委員)

直嶋正行経産相といえば、野党時代に政調会長として政権公約をとりまとめた政策通。トヨタ労組出身で経済にも明るい。以前はそんな印象があった。それだけに、昨秋、GDP速報データを業界団体の会合で事前に漏らすなどという、素人のような失敗をしたのは意外だった。

ただでさえ鳩山政権は経済界から「経済音痴」「成長戦略がない」などと見られている。その見方を覆し、企業や市場の信頼を得ていくには、経産相のこの人がそのイメージを変えていく先頭に立たねばならないはずだ。

そんな期待もこめてこの講演を聴いたのだが、残念ながら肩すかしにあった気分だ。鳩山政権の「新成長戦略」の発表文書をなぞるような説明ばかりだったからだ。ソフトな話しぶりが氏の持ち味とはいえ、あまりに淡々とした説明ぶりには、「この目標を絶対に成し遂げる」という気合いが感じられなかった。

そもそもこの「新成長戦略」そのものに気合いを入れるような中身が無いのかもしれない。政策内容に新味は無いし、難しい案件もことごとく避けているように見える。鳩山首相が高らかに掲げた「東アジア共同体」、民主党のマニフェストにある「日米FTA」、さらにそれらを実現する前提になる農産物の輸入自由化についても言及さえしていないのだから。

直嶋氏にこの点を問うと、「いま日米でFTAを結べるかというと正直きつい。農業などさまざまな問題と整合をとっていかないと…」と率直な答えが返ってきた。課題も問題点も頭の中にはあるようだ。

講演では一点だけ「気合い」らしきものがのぞいた発言があった。「日米より、どちらかと言うと日中韓のFTAを先にやりたい」。実現に向けて力強く進む姿を見せてほしいものだ。
 

ゲスト / Guest

  • 直嶋正行 / Masayoshi NAOSHIMA

    日本 / Japan

    経済産業相 / Ministry of Economy, Trade and Industry

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