2009年12月14日 00:00 〜 00:00
河東哲夫・元駐ウズベキスタン大使

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会見リポート

50億ドルの日本支援は執行困難

山内 聡彦 (NHK解説主幹)

「ユーラシア、クランと国家、時々、米兵」。風変わりなこの研究会の題は「東京タワー、オカンとボクと、時々、オトン」という映画をもじったもの。ユーラシアに造詣が深い河東氏らしい遊び心のあるネーミングだ。

ウズベキスタン大使を務めた河東氏は「アフガニスタンはそれだけではなく、中央アジアと一体のものとして考えるべきだ」と説く。インドやパキスタン、イランを含めた「七つ巴の国際関係」の中でアフガン情勢を読み解く必要があると強調した。

またオバマ大統領の新戦略について、「アメリカはアフガン情勢がそれほど荒れないうちに部隊の撤退が実現すればよいと考えている」と述べ、泥沼化しないうちに逃げ切りを目指しているという見方を示した。また日本が50億ドルの民生支援を打ち出したことについて、「50億ドルを執行するのが大変だ」として、アフガン側に受け入れ能力がない中で、民生支援を実施することは難しいとの認識を示し、「50億ドルを使い切る前にアメリカ軍が撤退してしまい、ウヤムヤになる可能性もある」と指摘した。

中央アジアをめぐっては影響力を競う中ロの限界についての指摘が興味深かった。ロシアはソ連時代の軍事侵攻でトラウマを抱え、アフガンに決して軍を送ろうとしない。中央アジアにとって最大の脅威であるアフガンから安全を守ってくれないロシアはそこが限界だという。一方、中国は「ソ連+イスラム」という中央アジアの中で民族的、文化的に異質であるという限界を抱えており、日本のように小切手外交にならざるを得ないと見る。

かつてユーラシアを支配した遊牧民族のモンゴル人は馬から弓を引く技術に優れていたが、これは最新の武器を持ち、今この地域に進出する米兵に通じるものがあると河東氏は言う。さてオバマのアメリカはアフガン情勢を好転できるのだろうか。
 

ゲスト / Guest

  • 河東哲夫 / Akio KAWATO

    日本 / Japan

    元駐ウズベキスタン大使 / Former Ambassador to Uzbekistan

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