会見リポート
2009年12月08日
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ブルーノ・ロドリゲス・パリージャ・キューバ外相
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会見リポート
混沌ポスト・カストロ兄弟
岩城 聡 (日本経済新聞前サンパウロ支局長)
国際会議で自信満々にだみ声でまくし立てたペレス前外相とは対照的に、今回、我々の前にソロリと立ったロドリゲス新外相は、キューバの対外的な顔としては正直、インパクトに欠けた。ラウル・カストロ国家評議会議長が単なる『フィデルの弟』ではなく、自身の政権体制固めに〝フィデル色〟を排した人事の妙を見た気がした。
ただ、会見での外相の発言は、かすかな違和感とともに、今も心に張り付いたままだ。「オバマ米大統領は対キューバ政策で、歴史的な転換ができる」「米国とキューバは隣国同士で同じ海、同じ自然環境を共有している」。かつて、ここまで米国へのあからさまな秋波をなびかせたキューバ首脳を見た記憶がない。
長年続く米国による制裁で、衰えゆく国力。オバマ政権に変わり日本同様、「話せば分かる」的な、期待とも幻想とも言えない甘いムードがかの国で広がっているのだろうか。
あの場にいた誰しもが聞き耳を立てたのは、やはり、フィデルについて語った時のことだ。「身体的にも元気だし、活発な文筆活動を行っている」
そこに加えた一言。「フィデルが週一回出す『考察』はキューバの参考になる」。革命から50年以上たっても、依然、老兵が政策決定に関与し、それを国外に顕示せざるを得ないこの国の危うさと、人材の乏しさ。「ポスト・カストロ兄弟」の行方が混沌としていることだけがわかった会見だった。
ゲスト / Guest
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ブルーノ・ロドリゲス・パリージャ / Bruno RODRIGUES PARRILLA
キューバ / Cuba
外相 / Minister of Foreign Affairs