2009年12月02日 00:00 〜 00:00
アハメドゥ・ウルド・アブダラ・ソマリア担当国連事務総長特別代表

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会見リポート

再建への遠い道のり

服部 正法 (毎日新聞外信部)

「どこから話を始めたらよいか。とても難しいのです」。のっけから、そう嘆息して切り出した。

モーリタニア出身の外交官。外相や駐米大使を歴任し、国連では事務総長特別代表としてアフリカ・ブルンジで内戦に対処。スーダン・ダルフール問題でも国連特使を務めた。外交交渉・紛争収拾のベテランをして、かく語らしめるところに、ソマリア問題の解決の難しさが表れているように思えた。

冷戦崩壊期の91年、社会主義独裁のシアド・バーレ政権が倒れ、内戦に突入。以降20年近く、中央政府が機能しない「崩壊国家」ソマリア。最近では、海賊問題や、国際テロ組織アルカイダとの関係が指摘される急進的イスラム組織「アルシャバブ」の勢力拡大が目立つようになり、周辺地域やグローバルな安全保障の面からも注目を集める。だが、現在の暫定政府は首都モガディシオを含めて支配権は極めてぜい弱で、内戦終結の見通しは見えてこない。

アブダラ氏は、不法移民輸送や密輸などの取引の温床となり、大規模な組織ネットワークを持った海賊が大手を振る現在のソマリアの「犯罪経済」を説明。誘拐などが横行し、人権無視の無政府状態が続いていることを強調した。その上で、「政府への支援が最優先。日本は政府を承認してほしい」と述べ、現在の暫定政府への国際社会の支援こそが安定化につながるとの考えを力説。「放置してはいけない。国際社会の信頼性が問われる」と訴えて、政府を通じ、国際社会が雇用確保やインフラ復興、人道支援に当たるよう語りかけた。

しかし、海賊などの犯罪の容疑者者の訴追が必要との発言に対し、具体的なプロセスを問う質問には、「(犯罪)記録を文書化することからスタートしたい」との返答。再建に要する遠い道のりを実感させる会見となった。
 

ゲスト / Guest

  • アハメドゥ・ウルド・アブダラ / ahmedou ould-abdallah

    国際連合 / UN

    ソマリア担当国連事務総長特別代表 / Special Representative,Somalia UN Secretary-General

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