2009年11月27日 00:00 〜 00:00
李双龍・復旦大学新聞学院准教授

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会見リポート

高まる政府のネット世論への関心

比嘉 清太 (読売新聞国際部)

中国当局がインターネット上の世論をいかに気にしているか。中国のメディア専門家の口から語られると説得力があった。李氏が教べんをとる復旦大学新聞学院は、新聞やテレビ局だけではなく、政府の新聞弁公室などメディア管理を担当する当局などにも人材を供給している。

陝西省の農民が、絶滅の危機に瀕している「華南トラ」の写真をでっち上げた事件や、多数の子どもたちが誘拐されて山西省の違法れんが工場で強制労働させられた事件は、日本でも報道された。いずれも、新聞やテレビなどではなくネット上で疑惑が取りざたされて世論が沸騰。中国当局が問題解決に動かざるをえなかったケースだ。李氏は、ネット上での問題提起が地方都市の腐敗幹部の逮捕につながった事例も紹介した。中国のネット利用者は3億人以上とされ、李氏は、「政府のネット世論への関心度は日増しに増加している」と断言する。

災害報道については、昨年の四川大地震が転機となったようだ。李氏によれば、以前は国務院の許可がなければ地震ニュースを報道できなかったが、地震発生の直前に施行された条例によって可能となった。四川大地震が発生したニュースは速報され、ネット上では被災者や家族のための「人捜し掲示板」などが設けられ、「既存メディアとネットが相互補完の役割を果たした」という。

李氏は日本留学時代、日本記者クラブで7年以上もアルバイトをしていたという。リップサービスでもないだろうが、質疑応答では「個人的な考え」と強調しつつも踏み込んだ発言が目立った。「情報公開といいながらコントロールは強まっているのではないか」との問いに、「既存メディアだと中国式のルールがある」「中国は様々な問題を抱えている。私から見ると、すべてを報道してもいいのだが」。かなり率直な発言ではないか。
 

ゲスト / Guest

  • 李双龍 / Soryu RI

    中華人民共和国 / China

    復旦大学新聞学院准教授 / Associate Professer,Newspaper Academy,Fudan University

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