2009年11月20日 00:00 〜 00:00
ビタウタス・ランズベルギス・リトアニア元最高会議議長

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会見リポート

いまだ舌鋒鋭く バルトの老闘士

佐々木正明 (産経新聞外信部)

会場に入ってきた老紳士は背中が丸く曲がり、足取りもなんだか弱々しい。18年前、リトアニア民主化のリーダー、民族組織サユジスの議長として、「赤の帝国」を追い出した獅子奮迅ぶりを現地で見た記者からは「太ったな」との声も漏れた。

しかし、会見が始まると突然、炯々たる眼光を周囲に放ち出す。舌鋒鋭い言葉で、民主主義を脅かす者たちや、その現象を次々に斬っていった。

ロシアのプーチン首相を「権威主義的なリーダー」「残忍な独裁者・スターリンを称賛する過激なスターリニスト」と断言。中国や北朝鮮などの非民主国家について、「彼らの挑戦に、民主勢力が一致団結しなくてはならない」と主張し、先に中国を訪れたオバマ米大統領さえも、「(人権問題など)大事な問題に触れておらず、これは妥協を意味する。自殺行為になりかねない」と批判のやり玉にあげた。

終了後、「中身の濃い会見だったなぁ」と某社編集委員が思わずつぶやく。名前を翻訳すると、「土の山」を意味するバルトの闘士は77歳にして今も、自らが命がけで勝ち得た民主主義の砦を、独裁国家から守る守護神そのものだった。決して背中を見せない毅然とした姿は、門前の怒れる金剛力士像にも重なった。

会見の日の夜、今度は代官山でピアノコンサートを開き、音楽家としての一面も披露した。昼とは一転した柔和な表情を見せ、国民的作曲家チュルリョーニスの作品やリトアニア民謡を40分間にわたり独奏した。集まったドレス姿のご婦人たちをほれぼれさせたのは言うまでもない。会場で買ったCDにサインを頼むと、「土山」と日本語で書いて返してきた。ニヤリと笑ったお茶目な表情を私は生涯、忘れないだろう。

ゲスト / Guest

  • ビタウタス・ランズベルギス / Vytautas LANDSBERGIS

    リトアニア / Lithuania

    元最高会議議長 / Former Chairman,Supreme Conference

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